2014 Fiscal Year Research-status Report
批判的教授学の小中高社会系教科への応用・実用化に向けた研究
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26381179
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
渡部 竜也 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10401449)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 批判的教授学 / 社会改造主義 / 社会科 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、批判的教授法の基礎研究として、次のことを行った。(1)最近の批判的教授法を意識した米国などの実践事例などを、外国の学会誌『Rethinking School』から収集した。しかしまた体系的な分析は出来ていない。(2)批判的教授学が重視する政治的市民性育成が米国でいつ頃、どのように行われるようになったのかを明らかにするために、1910年代から1930年代の社会改造主義者たちの教育論に注目した。特に、NEAが1915年と1916年に行った二つの報告書『中等教育における社会科』と『コミュニティ・シビックス』、そして1930年代のラッグの著書『アメリカ人の生活と学校カリキュラム(American Life and the School Curriculum)』の全訳を行い、同時にこの二つの性格の違い、さらには昨今の批判的教授法の動きとの違いについて検討した。この研究成果については、本年度の紀要にまとめて投稿することを予定している。また、三つの著書の出版を計画している。(3)NCSS大会に参加し、批判的教授法の昨今の動向や社会科での意義について、ドナルド・エバンズ氏から情報を収集した。(4)国内の批判的教授学を意識した実践、またはこれに準ずるような実践を収集した。
こうした研究の意義としては、次の点を挙げることができる。(1)米国の批判的教授法(政治的市民性育成)の原点は、20世紀初頭のこうした社会科教育関係の報告書の一部や、ラッグの社会科教育論にはっきりと見ることができることを明らかにしたこと。(2)本格的に政治的市民性育成を公教育で重視したのは、米国が最初であることを明らかにしたこと。(3)広い意味での批判的教授法の実践は、国内にもあることを明らかにしたこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『Rethinking School』から論文を集める段階までしか出来ず、その後の分析までは出来ていない。一つは、批判的教授学の原点を知ること、そしてその社会的文脈を知ることに途中で関心を持ち、こちらの研究を重視したことがある。 とくにジル―が注目するラッグやカウンツといった、1930年代の思想家の教育論と、ジル―らの異同にはとても関心があり、研究が少々脱線してしまった。 軌道修正を今年は行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、国内外で集めた実践について、小中高でどういった段階制が見られるのか検討していきたい。また、これらの実践がどのような意義や限界を持つのか、検討していきたい。
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Causes of Carryover |
当初購入したかった本が、廃版で入手できず、予算が余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今回の研究に関係する著書が出版されたようなので、それらの購入に活用する予定である。
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