2014 Fiscal Year Research-status Report
探求的な学びを促すResearcher-Like Activityによる事例研究
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26381188
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
伊禮 三之 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (00456435)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RLA / 条件変更による課題設定 / 主体的探求活動 / 数学的コミュニケーション / フィボナッチ数列の巡回性 |
Outline of Annual Research Achievements |
RLA(Researcher-Like Activity)とは、研究者の活動をモデルとして縮図的に授業に組込み、研究者の活動のおもしろさや困難さを模擬体験しながら、主体的な探求活動とともに学習者の意欲を引き出す教育実践で、市川伸一により提起され、狩俣智によって中学校の数学教育に導入された。本研究では、狩俣の研究をうけ、さらに継続・発展させるべく、RLAの教育論的な意義づけ―とりわけ近年重視されている数学的活動や数学的コュニケーション能力、数学的表現力の育成との関連―とともに、中学校の数学教育はもとより本格的な高等学校への適用可能性等を明らかにし、また、研究者の活動の模擬体験に付随して知識や技能を広げる可能性や、これまでの積み上げ的な授業観・学力観に支配された数学教育からの転換への示唆等の検討を行うことを目的とする。 本年度は、中・高校の現場の教員を中心とした10名でRLA研究会を組織し、第1回公開研究会を開催した。数学教育へのRLAの導入者である狩俣の講演と「数学Aの課題学習の事例研究~RLAによる課題学習:「正多面体」~」、「星型多角形について~生徒の考えに学びあう~」、「私のRLA実践例」の実践事例を通して、RLAの枠組みについての理論的検討や現在の到達点及び課題等の整理を行い、その中心的な意義は、主体的な探求と相互評価を含む数学的コミュニケーション活動にあることを確認し、全過程だけではなく、個々の過程そのものの意義も明らかにした。②また、高等学校におけるRLAの事例開発として「フィボナッチ数列の巡回性を題材としたRLA」をテーマとして授業研究を行った。条件変更を基本とした問題設定によるグループでの共同探求過程やその成果のポスターセッション、及び相互批評の過程から学習者の主体的な探求活動や活発な数学的コミュニケーション等が確認され、事後の感想から好意的な評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、中学校及び高校の現場の教員を中心とした研究協力者とともに10数名のRLA研究会を組織し、①RLAの枠組みについての理論的検討と現在の到達点及び課題の整理と、②高等学校「数学Ⅰ・A」の課題学習でのRLAの事例開発と授業研究の開催であった。①については、中学校数学教育へのRLAの導入者による基調講演と問題設定による協同探求学習を追求している実務家による招待講演、さらに研究協力者3名による事例報告を通して、RLAの枠組みについての理論的検討や現在の到達点及び課題等の整理を行うことができた。特に、RLAの全過程(問題設定→解の探究→表現活動→相互評価)だけではなく、個々の過程そのもの意義(基調講演及び川西の事例報告)も明らかになった。②については、「数学Ⅰ・A」の課題学習ではなく、「数学Ⅱ・B」での事例研究となったが「フィボナッチ数列の巡回性」をテーマとする事例開発及び授業研究(福井県立武生高校・沖縄県立普天間高校)を行うことができた。その詳細な授業分析や論文化等はこれからではあるが、研究計画全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、RLA研究会及び授業研究会(事例研究)を行い、①「問題設定(問題づくり)」のRLAにおける位置づけや条件変更の問題設定にふさわしい基本課題の特徴等についての検討と、②中学校及び高校数学におけるRLAの事例開発を行う。これらの検討を通して、RLAの中心的な意義である主体的な探求活動や数学的コミュニケーション活動を促進しつつ、総じて学習者個人の取り組みにとどまっていた活動過程やトピック的な色彩の強い問題設定を、協働的な探求活動や「体系的な理解」を指向した探究活動について、その意義を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の内訳は設備備品費のみで、6月1日付け他大学へ異動のため、異動後の使用が合理的だと判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、異動後に、設備備品費(ノート型パソコン、授業研究用テレビ)として使用する。
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