2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Research on the Cultivation of Competence in German School Music Education
Project/Area Number |
26381190
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中島 卓郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20293491)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 音楽 / ドイツ / アビトゥア試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はドイツの大学入試資格試験であるアビトゥア試験内容(2012/2014・バイエルン州)について詳細に調査研究を行った。 基礎・基本的な「知識・技能」としては,①専門用語や記号の理解,②読譜・記譜および聴音に関する能力があげられる。専門用語や記号の理解が論述には必須である。用語や記号の意味を問うているわけではないので,単なる知識として習得しているだけでは不十分である。実際に提示された楽曲および譜例と関連させ,様々な知識を駆使して解答する必要がある。どのような用語を用いて何について論述するかが問われているのである。 「思考・判断・表現」に関するものとしては,①作曲技法の分析能力,②テキストを通して音楽を捉える能力,③社会的文脈で音楽を捉える能力,④演奏表現の差異を捉える能力,⑤イメージ・雰囲気に関係する能力があげられる。主題労作(動機やテーマの素材の展開方法)に関しては高度な分析能力が求められている。形成法, 変奏手法や編曲技法等について楽譜上から具体的な例を抽出して説明せねばならない。多様な楽曲を幾度も分析した経験なしには解答できないであろう。課題には,作曲者の言説(ベルリオーズの「プログラム解説文」,シューマンの批評文,バルトークの論説),楽曲の歌詞(ディエス・イレの詩,メーリケの詩),音楽学者(ケッヘル,ヴェーバー,シュヴァイツァー)の言説等のテキストが数多く引用されている。それらの専門的な内容を読み解く素養が必要であり,その内容と楽曲との具体的な関連について述べさせている。社会的文脈を視点とした論述に関しては,管弦楽曲の弦楽四重奏版やピアノ譜への編曲の背景,音楽と市民階級,音楽と産業,あるいは音楽と聴衆・興行者・出版社等の関係性を指摘させる設問となっている。楽曲を通して社会を眺める,あるいは社会を通して楽曲を再認識させていることは非常に興味深い。
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Research Products
(3 results)