2015 Fiscal Year Research-status Report
学校環境の異なる国語科教師同士が相互主体的に教科内容観を編み直す学習過程の解明
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26381204
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
丸山 範高 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50412325)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国語科教育 / 教師の経験知 / 教科内容観 / ナラティヴ・アプローチ / 事例研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度の研究成果は、前年度に行った実地調査の継続、研究成果の学会口頭発表、学術雑誌(学会誌)への論文発表から成る。 27年度実地調査は、前年度同様、山間部や離島にある高校で勤務する複数の国語科教師を対象とした。各教師の国語科授業を観察した後、国語科教科内容を当該校の生徒に学ばせる必然性をテーマに半構造的インタビューを行った。その際、当該教師が26年度インタビューで語った内容と、他の高校国語科教師が語った内容と、両者それぞれを自身の授業実践と照合させながら、主体的に意味づけられるようにした。調査により得られたインタビュー・データはすべて文字化し、授業実践の文脈をふまえながら意味のまとまりごとに区分けし概念化するというカテゴリー分析を施している。 また、26年度調査の分析・考察結果を研究成果として公表した。成果の内容は、離島・山間部高校に勤務する複数の国語科教師たちの教科内容観が授業実践として結実するプロセスについて、教師間での共通性と教師ごとの固有性を解明した点に集約できる。離島・山間部高校の国語科教師たちは、共通して、生徒たちの既有する世界観の偏狭性を解消したいというビジョンに基づき、国語科教材文のことばを尊重した読みの単元・授業をデザインしている。その一方で、当該校の生徒が抱える課題のうち、どの側面を重視するかによって、各教師らしさとしての教科内容観に差異が生じていた。たとえば、ある教師は、生徒の認識内容の深化拡張を重視する一方で、別の教師は、生徒の短絡的な思考様式の解消を目指すというようにである。これらの成果は、第128回全国大学国語教育学会・兵庫大会で口頭発表するとともに、日本教師学学会発行『教師学研究』第18号(査読あり・原著論文)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、前年度に行った実地調査の継続と、研究成果の発表であった。実地調査については、研究協力者の協力が予定通り得られたため、、高校国語科授業の観察と、授業に基づくインタビュー調査を行うことができた。また、本年度に発表した研究成果は、前年度調査結果を分析・考察したものであるが、学会での口頭発表のみならず、学術雑誌(学会誌・査読有り・原著論文)へも発表することができた。以上の理由から、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の課題は、本年度までに行ってきた実地調査を継続・発展させることにある。研究協力者となっている複数の高校国語科教師それぞれの実践の特徴を早急に取りまとめ、互いの実践を交流し、相互主体的に意味づけ合う機会を設けたい。そして、個々の教師が、自身の実践の固有性を自覚し、授業改善に向けた課題とその解消の見通しについて認識できるようにしたい。
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Causes of Carryover |
予定していた実地調査をすべて行うことができなかったため。本研究課題における実地調査は、同時期にまとめて行うものではない。1事例ずつ丁寧な調査を行い、得られたデータをある程度分析した後で、続く別の事例調査を行うものである。そのため、調査期間にかなりの時間を要する。さらに、調査内容が、高校国語科授業の観察と、それに基づく現職教員対象のインタビュー調査であるため、長期休業中や学校行事が集中する期間は調査できず、調査日時の調整に難航することもあった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度にできなかった実地調査を年度当初に速やかに実施する。その上で、次年度計画として予定している実地調査を着実に進める。
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