2015 Fiscal Year Research-status Report
音楽の協同性に着目した幼小接続の音楽活動プログラムの実証的研究
Project/Area Number |
26381225
|
Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
尾見 敦子 川村学園女子大学, 教育学部, 教授 (20185672)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永岡 都 昭和女子大学, その他の研究科, 教授 (10172511)
小川 昌文 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (30177141)
蓮見 元子 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (60156304)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 音楽の協同性 / 幼小接続 / 音楽活動プログラム / ハンガリー / フィンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、音楽のコミュニケーション力に着目した、幼小接続の音楽活動プログラムを創出することである。今年度は「音楽の協同性に着目した音楽活動プログラム」の開発を進めるために、前年度に得た海外の研究資料を分析し、幼小接続期の音楽教育の理念、音楽指導の特徴等について分析し、日本保育学会、日本音楽表現学会で発表するほか、研究紀要への執筆を行った。 今年度は、海外の音楽指導の背景や意義を検証するために、ナショナル・カリキュラムの比較研究と、発達心理学的観点からの事例分析を行った。研究協力者とともに、ハンガリー、フィンランド、ドイツ、アメリカ合衆国のナショナル・カリキュラムの国際比較に取り組み、研究資料の収集のために、8月にブダペストとヘルシンキを訪問し、小学校、教員養成大学、音楽学校の音楽教員へのインタビュー、教員養成大学付属小学校で授業参観等を行い、9月にアメリカ合衆国ノースカロライナ大学で開催された全米音楽教師教育会議に出席した。4か国のナショナル・カリキュラムの音楽教育の理念、共通点・相違点を明らかにした研究成果を日本音楽教育学会で発表した。 これと並行して、前年度に収集したハンガリーの幼児の音楽指導を詳細に分析し、わらべうた遊びが幼小接続期の音楽活動プログラムとして、幼児の「学習者」としての基盤を育てる遊びであることを明らかにした。また、日本で幼稚園・保育所で長くわらべうた保育に取り組んできた研究協力者を得て、わらべうた遊びが音楽の協同性を有する「幼児の発達特性にかなった音楽体験」であることを明らかにした。その成果を日本乳幼児教育学会で発表し、さらに3年次の「わらべうた講習会」事業へと繋げた。 さらに、2016年3月にリトアニアで開催されたEAS(ヨーロッパ音楽高等教育機関連盟学会)に参加し、ヨーロッパ全体の音楽教育の研究動向について情報収集を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行のための5つのプロセスの内、第一の「音楽するという行為についての哲学的探求により音楽の教育的価値を明らかにする」については、ニューヨーク大学教授のDavid Elliottの著作Music Mattersの訳出を行っているとともに、それに基づく実践の効果を諸外国の優れた実践の分析によって明らかにしている。第二の「幼児・児童の発達特性からみた音楽体験の固有性」については、ハンガリーの幼児の音楽指導の詳細な分析をとおして明らかになったが、児童については今後に持ち越された。第三の「音楽による人間教育の系譜をもつ諸外国の実践・研究を収集し、知見を得る」については、ハンガリー音楽教育研究会、日本保育学会、日本音楽表現学会での口頭発表、日本音楽教育学会における共同企画と発表、各学会誌への報告、大学紀要への執筆により成果を発表した。第四の「日本の子どもの伝承遊びに内在する教育的機能と音楽構造を明らかにする」については、日本乳幼児教育学会における自主シンポジウムの企画と発表により成果を発表することができた。音楽活動プログラムの開発・実践・検証は最終年度に持越し、今年度はそのための地歩を得るための研究を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の遂行のための第三のプロセスである「音楽による人間教育の系譜をもつ諸外国の実践・研究を収集し、知見を得る」ことについて、最終年度の5月に日本保育学会において自主シンポジウム「幼児期の発達課題と教育・保育内容の再構築(1)」を企画し、諸外国の理念と実践から音楽とその関連領域を再考する提案を行う。昨年度の11月に日本乳幼児教育学会で企画した自主シンポジウムにタイアップさせ、研究成果を社会に還元する事業として、最終年度の6~7月に就学前教育・保育の現場の保育者を対象とした「わらべうた講習会(全3回)」を実施する。 本研究の最終目的である「音楽の協同性に着目した幼小接続の音楽活動プログラム」の創出にむけて、大学付属幼稚園・保育園と小学校で、子どもの発達諸側面に働きかける音楽の実験的なプログラムの実践を開始し、幼小接続期の教育に携わる研究協力者を得て、プログラムの検証を推し進める。これと、初年度から継続して行ってきた、諸外国の調査研究、幼小接続期の音楽の教育的価値の哲学的探求を合わせて、学会で本研究テーマに関するラウンドテーブルを企画し成果を発表する。 最終報告として、幼小接続期における音楽の協同性に着目した音楽活動プログラムの具体的提案とその理念的・理論的背景を合わせた普及版の冊子の制作を予定している。
|
Causes of Carryover |
今年度は研究テーマの遂行のために、研究分担者に加えて、複数の研究協力者との複数のの共同研究を企画し実施した。そのための種々の経費を要する状況が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
複数の研究協力者が複数回の準備会や学会への出席に要する交通費・宿泊費、翻訳や海外出張の際の通訳、学会非会員の研究協力者の学会参加費として支出した。
|