2014 Fiscal Year Research-status Report
戦後の「生活のうた」の伝播と変容‐歌詞,旋律,リズムに関する歴史的・心理学的研究
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26381227
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
嶋田 由美 学習院大学, 文学部, 教授 (60249406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 容子 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20283963)
村尾 忠廣 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (40024046)
水戸 博道 明治学院大学, 心理学部, 教授 (60219681)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生活のうた / 「ぴょんこ」リズム / 「おべんとう」 / リズム変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では研究者を歴史的調査と実験的実証研究の2グループに分け、それぞれの研究成果を有機的に関連付けて研究を推進する手法を採っているが、平成26年度は研究の基礎資料やデータの収集、分析の期間と位置づけて研究を推進した。 推進した主な研究内容は以下の3項目である。①戦後の保育における「生活のうた」に類する歌の出現の過程を文献調査的に明らかにする。②現在の保育現場における生活指導的な歌の扱いの実態を把握するために全国の保育園を対象とした大がかりなアンケート調査を実施し、得られた回答を分析する。③協力を得られた保育園において子どもを対象とした新曲の記憶再生実験を実施する。 上記の①に関しては、研究代表者が担当し、1950年~1960年代の保育系雑誌記事の調査を通して1950年代半ば以降、保育現場で生活指導やしつけのために歌が装置的な意味合いで使われるようになる過程を明らかにした。そして、その中で集団において統一されたリズムで調子よく歌を合わせることの必要性が生活指導的な歌のリズムを自然に「ぴょんこ」リズムへと変容させる要因の一つとなった可能性を示唆した。また上記の②に関しては研究者が共同でアンケート調査の企画・実施に関わり、全国から抽出した保育園1,000園に対し「おべんとう」「おやつ」などの歌の冒頭部分の楽譜を付したアンケート調査を実施し、339園から回答を得ることができた。この調査結果からは、「おべんとう」や「おやつ」の歌が原曲があるにもかかわらず、保育現場によって、「ぴょんこ」リズムや「ぴょんこ止め」のリズム、或いは等拍という各種のリズムで歌われている実態が明らかとなった。上記の③については、園児が「おべんとう」の歌の歌唱経験を持たない保育園を抽出し、実験用に作成した歌唱CDを用いた記憶再生実験を園児に行い、その結果をもとに次年度の本実験に向けた手続きの検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題申請時に掲げた歴史的調査研究グループの研究内容に関しては概ね研究が達成でき、次年度に向けての課題も明らかにすることができた。また実験的実証研究グループの研究内容として設定した子どもに対する新曲による記憶再生実験とその歌唱の観察に関しても予備的調査という段階では達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は初年度のアンケート調査結果をもとに実験に協力いただける保育園に於いて子どもへの新曲の記憶再生実験を行い、その研究成果の一部を日本音楽教育学会等で口頭発表をする予定である。またアンケート調査で協力を得られた保育現場を対象に事例研究的に詳細に関するインタビューと子どもの歌唱実態の観察ならびに記録を行い、その分析を通して「生活のうた」に類する歌の伝播と変容に関する理論的仮説を立てる。
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Causes of Carryover |
26年度の調査では、「おべんとうの歌」の学習過程におけるリズムの変容を、保育園の教育実践の中で実験的に明らかにすることを目的とした。26年度に実施したアンケート調査に基づき協力園をつのり、5つの保育園において実験を実施する予定であった(予備実験を2園、本実験を3園)。しかし、協力の承諾を得た保育園の中で、「おべんとうの歌」をまだ学習していない保育園が2園しかなかったため、5つの保育園での実験の実施が不可能であった。そのため、26年度は、予備実験を大学生に対しておこない、その結果に基づいて、本実験を1つの保育園において行った。本実験を計画どおり行えなかったため、残りの4つの保育園で実験を行うための旅費とデータの分析のための費用が未執行となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は、新たに協力園をつのり、引き続き本実験を4つの保育園に対して行う予定である。実験はさまざまな環境の保育園に対して全国的に行う予定である。旅費として、30万円、データの分析補助の費用として3万円使用する予定である。
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