2015 Fiscal Year Research-status Report
体系的な対外認識育成をはかる外国史教育方法論に関する日独比較研究
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26381232
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 公 明治学院大学, 心理学部, 准教授 (90323229)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育学 / 教科教育学 / 社会科教育学 / 歴史教育 / 外国史 / 歴史地図 / 時間認識 / 空間認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、体系的な対外認識育成をはかる外国史教育方法論のあり方について、実践活動の計画・実践・評価・改善のサイクルを通じて実証的に明らかにする研究である。 平成27年度は、過年度研究活動の補足活動を継続しつつ、主に日本の対外認識育成に関連する教材及び実践計画、評価に関して研究を進めた。以上の課題に関して得られた実績は、以下のとおりである。 1.「時間的認識」の観点から考察した外国史教育における教材としての「歴史地図」は、文化や民族、宗教といった生活の基底を共有する人間による活動記録という意味において「時間的認識」を捉え、異なる時間における人間活動を対比的に説明する方法としての「時代区分」認識を育成し獲得する材料として有効である。特に、伝統的時代区分である「古代・中世・近世」三時代間に見られる相違のとそ要因を明確に示すと同時に、異なる時代に生きる人間の時間認識とその変容を対比的に考察するために有効な材料である。 2.「空間的認識」の観点から考察した外国史教育における教材としての「歴史地図」は、1.にある時代区分論自体の多様性とその相違を生成した人間活動の基盤を地域や空間の区分を成立させる気候や風土に求める側面と、当時の人間活動の広がり、さらには空間的拡張を欲する範囲としての空間認識を示す側面から、「空間的認識」を育成し獲得するために有効な材料である。 3.「歴史地図」の活用場面として、地域世界の一体化が進行する16世紀以降の地球世界の成立を考察する場面において、過程としての時間的経過に加え、異なる空間毎に有する多様性の読み取りも可能とする。16世紀以降の諸地域世界の「一体化」が単なる地理的・空間的一体化ではなく、当時の人間活動を成り立たせる過去の人間の認識記録である歴史地図の変容から確認する手法は、異なる社会や文化の変容を体系的に捉え対外認識の獲得を一層有効に進める方策である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に優先して取り組むべき課題として、ドイツの歴史教育に関する調査を予定していたが、業務に差し支えない範囲で設定可能となった出張日程内での調査受け入れのための調整が難航し、結果的に次年度の実施とする判断となった。本研究課題が比較研究を手法とすることから、実践活動を計画・実践・評価・改善するための観点の抽出や設定において作業が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成28年度は、過年度の研究達成度を踏まえつつ、最終的な課題である時間的・空間的認識の統一的把握に資する対外認識のための外国史教育の体系性とその実践方法論の解明に向けた研究総括を進めるため、以下の3つの課題に取り組む。 第一に、日独比較の観点の明確化を図るため、ドイツ歴史教育の実践記録を踏まえ、「歴史地図」の教材性を「時間的認識」及び「空間的認識」の観点から考察する。そのためにも、過年度までの進捗状況でも遅れの大きい、ドイツでの実践記録の収集に向けた現地との調整調整を最優先事項として取り組む。 第二に、体系的な対外認識育成をはかる外国史教育方法論の構築について、「歴史地図」の読解を通じた対外認識育成のための外国史教育の体系性とその実践方法論について提示する。そのために、外国史教育とその実践が有するべき要素である「目標・内容・教材・方法・評価」を基盤として、活用を想定した「歴史地図」の資料毎に考察、分析し、実践する際に必要な情報を抽出、整理する。 第三に、研究総括に向け、収集した歴史地図資料及び実践記録の整理・分析・考察を中心に、前年度までに得られた成果を確認、補足する作業を継続する。考察過程で収集した「歴史地図」を中心とした資料、及び成果物は、デジタルデータとして整理し、データベース化を進め、公開可能な範囲で公表、発信するものである。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、ドイツでの調査実施にあたり、日程調整の問題から結果的に次年度の実施とする判断を行ったため、想定した旅費及び謝金、通信費等の支出が発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、過年度までに実施予定であったドイツでの調査を行うコーディネーターとの調整を確実に進め、調査活動に必要とされる旅費や謝金、通信費等の費用について、適切に執行する。
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