2016 Fiscal Year Research-status Report
学校音楽カリキュラム経験の実証的研究―生涯の「学びの履歴」にみる学びの経験の解明
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26381235
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笹野 恵理子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70260693)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学校音楽カリキュラム / カリキュラム経験 / 生きられたカリキュラム / 潜在的カリキュラム / 学びの履歴 / 教科カリキュラム / 音楽科教育 / 学校音楽文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果は、以下の3点である。 第一は、学校音楽カリキュラム経験を実証的に解明するため、児童生徒の調査を実施し、分析を終了した。京都市、京都府、高知県を中心に、小学校5、6年生、中学校1~3年生を対象に、各学年500前後の母数の調査データを得て、分析することができた。調査結果に因子分析を施したところ、7因子を抽出することができた。 第二は、教師用調査の分析を終了した。京都市、京都府、高知県の全小・中学校に郵送法で実施した調査は、152の調査データを確保し、分析することができた。調査結果に因子分析を施したところ、6因子を抽出することができた。 第三は、教師と児童生徒の分析をつきあわせ、大きな理論仮説的なイメージを形成することができた。上の2つの分析から明らかにされる教師、児童生徒の学校音楽カリキュラム経験は、以下の3つにカテゴライズできる。A.「制度化されたカリキュラム」が影響を及ぼしたと想定できる因子、B.「制度化されたカリキュラム」に明示されない因子、C.教師や児童生徒が独自に意味を編みかえながら経験を構築したと想定できる因子、である。「C」に注目する必要があるが、中でも本研究が注目するのは、「協同的学習」と命名した、集団的、協同的な学習のパースペクティブにある。この視野は、「制度化されたカリキュラム」に明示されないレベルのもので、かつ教師、児童生徒が共有するパースペクティブであることから、学校音楽教育過程の特徴、特質といえる。 次の課題は、教師のインタビューデータ、児童生徒のグループインタビューデータを突き合わせ、掘り下げて仮説生成を行うとともに、これら経験が産み出されるメカニズムを解明することにある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査実施ならびに分析を終了したことから、当初の予定通りおおむね順調に進展しているといえる。 今後、これら分析データをもとに、理論仮説を生成するが、教師調査について、属性が明確に区分できない調査手法であったことが悔やまれる点を除けば、おおむね必要なデータは確保できたものと考え得る。 次年度は、理論仮説構想と成果公表を行う予定であるが、理論仮説に必要なデータが不足している場合には、補いながら実施するが、予定する理論仮説はおおむね構想し得ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、学校音楽カリキュラム経験の理論仮説の構想である。 本研究では、これを「学校音楽文化」理論としてまとめたいと考えるが、そこにおける研究上の課題は以下のものが考えられる。 第一に、先行研究がない本研究では、援用する理論をどこに求めるかという課題がある。仮説生成型研究であるとはいえ、まったくの仮説なく研究をすすめることはあり得ない。現在のところ、相互作用論と、ミュージッキング(C.スモール)の概念が有効ではないかと考えている。 第二に、教師と児童生徒の調査結果の整合性である。整合性の有無は、この後提案する理論構築に大きく影響を及ぼす。現在のところでは、集団的な学習という視野に共通性を見いだすが、もう少し詳細な分析も必要になる。 今後は、分析結果をまとめるとともに、提案できる理論仮説を構想し、成果公表に重点をうつしたい。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況は、謝金計上した調査分析費によるものである。調査分析が順調に進展したことと同時に、分析の見直しの必要性が生じ、前倒し請求によって調査分析のための謝金工面を行ったところ、分析が予定より早期時点で完了し、見直しにかかる費用が想定より少なかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度前倒し請求によるものであり、予定した分析は終了しているため、当初の予定通り、次年度は理論仮説を構想することに重点化し、当該助成金は成果公表のための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)