Outline of Annual Research Achievements |
算数教育において, 児童の思考と言動に影響する要因の1つとして, 数学的価値が挙げられる。数学的価値を「高度の自律性を持つ文化遺産としての算数・数学において, 我々の欲求を満たす事象や対象の性質と能力である」と定義するとき, 数学的価値の本質としての選択により, 児童は, 言動の様式, 手段, 目的に関して, 数学的により望ましいとされる選択を行うと考えられる。算数教育における望ましい選択として, 本研究では, 「人の美と醜を識別する性質・傾向」としての審美性を採り上げた。そして, 本研究の目的は, 審美性認識に関する児童の特徴を述べること, 算数教育における審美性に関する測定尺度の開発すること, 審美性に関する教材開発を行うこと, 開発された教材を用いた授業実践により, 授業の効果を明らかにすることであった。そのため, 平成26年度には, 第2学年から第6学年の児童を対象に行った図形領域における審美性認識に関する調査にを行い, 各学年の児童の特徴を分析・考察した。また, 平成27年度には, 第6学年の児童を対象とした審美性に関する調査を実施し, 算数教育における児童の審美性に関する測定尺度を開発した。さらに, 平成28年度には, 試行として, 開発した測定尺度を用い, 事前・事後テストとし, 第5学年を対象に審美性に関する開発した教材を用い, 授業実践を行い, 授業実践の効果を明らかにした。そして, 授業実践を行った小学校において, 算数科に関する職員研修に参加し, 研究成果をフィードバックし, 授業改善に役立てた。今後の課題として, 他の小学校において, 第5学年及び第6学年を対象とした授業実践が残されている。
|