2016 Fiscal Year Annual Research Report
The teaching of literature in secondary education in France: training, transmission and issues of literary heritage
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26381243
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
飯田 伸二 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (60289650)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文学遺産 / 文学教育 / コレージュ / 教育改革 / カリキュラム / le patrimoine / l'heritage / 共通基礎知識・技能 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は戦後から今日までの前期中等教育国語カリキュラムを精査した。その結果,「文学遺産」という概念が本格的に導入されたのは,1977年統一コレージュ施行以降のことであることが明らかになった。 同年以降,コレージュは小学校を卒業したすべての子どもたちを受け入れ,生徒の多様化に直面する。以後,1990年代にかけて,外国文学の導入(1977年),新聞,広告,イメージ等の教材化(1985年),若者向け文学の導入(1996年)が試みられた。これらの施策は現代に相応しい教養の模索であった。 これらの模索の後,「文学遺産」がカリキュラムで重要な地位を占めたるは2005年の「共通基礎知識・技能」の制定,2009年のカリキュラム改訂以後である。調査から,2009年により教科書の構成が大きく変わり,ほぼ古典,名作が独占していることが判明した。この変化の背後には,文学遺産を広く市民が共有することで,フランス社会への帰属意識を強化する狙いがある。 しかし,教員への聞き取り調査によると,文学遺産導入の意図が彼らに十分に共有されていないことが明らかになった。改革が浸透する前に,次の改革が議論され施行されてしまうからである。 以上の事実が示唆するように,文学遺産を巡る政策の背後には文学的教養の涵養・伝達に対する社会の危機意識が働いている。フランス語で文学遺産は一般的に「le patrimoine litteraire」と言われる。「le patrimoine」という用語は相続の対象となる財産をさすが,相続自体は意味しない。相続された財産をさす「l’heritage」とはニュアンスが異なる。フランスで文学遺産が議論される際に,「l'heritage」ではなく,「le patrimoine」という用語が頻繁に使われるのは,伝達が自明ではないことに対する危機意識,問いかけが働いてるからなのである。
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Research Products
(3 results)