2016 Fiscal Year Research-status Report
小学校における連句・俳句の創作活動に基づく認知的内面化モデルの作成と教材開発
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26381257
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
迎 勝彦 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50303194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 徹 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (30410880)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 韻文教材 / 連句・付け句 / 教材開発 / 国語科教育学 / 学校現場との連携 / 内面化モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「連句」「付け句」を小学校国語教育における新たな素材として用いることを提案し、その教育的効果を明らかにすることを目的としている。本年度は、前年度に実施した小学校における検証授業(本研究で構築した理論の検証)をふまえ、「連句」「付け句」を小学校国語教育における新たな素材として用いることの可能性とその教育的効果について検討を加えた。 本年度の具体的な研究実績は以下の通り。 1,学習活動の認知的側面からの分析と連句系教材の小学校現場への応用可能性の検証:小学校高学年段階での「付け句」創作時における学習活動の実態を学習者の認知的側面に着目してモデル化するとともに、実際的な支援・指導方法を提案するための理論的な枠組みを明らかにした。開発した連句系教材の教育現場への適用可能性を検証するとともに、見込みから句作への三段階を具体化することの学習効果とメトニミー、シネクドキー的な用法が学習者の認知活動に認められたことを明らかにした。連句創作の過程において「付け句」に着目することの意義を検証しつつ、特に趣向<散文化>の部分の教材化を提案することで、付け句の創造性を論じるとともに、散文と韻文とが表裏の関係にあることに気づかせる上で有益な素材になることを指摘した。 2,学習記録のデータベース化:前年度に行った録画機器による授業記録及びインタビュー記録のデータベース化を継続して行った。ここで得たデータに基づき次年度も引き続き分析・考察を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の収集と整理、検討による基礎的な作業を踏まえた「連句」「付け句」を小学校国語教育における新たな素材として用いることの可能性、その教育的効果についての検討と教材化を図るための理論的枠組みの構築、データベース化についても順調に進展している。本年度はとくに、小学校高学年を対象とした実地研究をふまえ、得られたデータに基づいて学習者の活動を認知的側面から分析、検討した。 なお、研究計画時には、創作した句に対し、学習者が互いにメタ的な視点を用いて相互交流を深めるとともに、創作行為そのものを対象化し、自己評価や相互評価にまで学習活動を展開できるような学習モデルを具体化することを目的としていたが、これについては十分に検討することができなかった。次年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を受けた形で進め、「連句」「付け句」の教材化に関する基礎的研究の成果をふまえながら、本研究の目的に沿った授業手法の確立と教材開発に関する理論構築を引き続き行う。また、29年度は、28年度に実施した学習活動の認知的側面からの分析を継続して行うとともに、本授業実践における創作と鑑賞とがどのように結びついて学習が進められたのかについて分析する。考案した教材(韻文教材)の小学校での適用可能性について学習者の実態分析と合わせて検証を加えていく。とくに、「連句」「付け句」の教材化については、27年度に実施した授業の実態に基づきながら、仮説的に考案した授業手法の応用可能性及び開発した連句系教材の有効性を吟味し、具体的にその効果や教育的意義について提案できるようにしたい。 また、上記の内容とも重なるが、28年度に引き続き、考案した授業手法に検討・検証を加え、韻文の創作と批評過程における学習者個々の思考過程の内面化モデルを仮説的に作成し、これを学習者把握のための指標とすることの妥当性、有効性を明らかにするための作業を昨年度に引き続き行っていく。具体的には、創作した付け句(あるいは創作途中の付け句)に対し、学習者が互いにメタ的な視点を用いて相互交流を深めるとともに、創作行為そのものを対象化し、自己評価や相互評価にまで学習活動を展開できるような学習モデル(内面化モデル)を明らかにする。
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Causes of Carryover |
昨年度の計画では、認知論的な視点から考案した授業手法に検討・検証を加えるとともに、韻文の創作と批評過程における学習者個々の思考過程の内面化モデルを仮説的に作成し、これを学習者把握のための指標とすることの妥当性・有効性を明らかにすることを目的としていた。しかしながら実際には、創作と批評過程における学習者の思考の様相をモデル化するまでには至らなかった。加えて、27年度に実施した検証授業の内容を詳細に分析・検証する必要があり、また学習記録のデータベース化も27、28年度に引き続き行う必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、韻文の創作と批評過程における学習者個々の学習モデル(内面化モデル)の構築等、先行研究の整理のための人件費が改めて必要になる。このための研究打ち合わせ、研究会議、検証授業の分析等に関わる旅費に加え、授業分析時に必要になる研究補助費用等の人件費と合わせて29年度に使用することとしたい。また、27年度に実施した検証授業の内容を詳細に分析・検証する必要があり、また学習記録のデータベース化を継続して行うための人件費も必要になる。 なお、次年度には研究の内容を一部論文として発表する計画を立てている(28年度にも論文を執筆した。掲載される雑誌の刊行は29年6月の予定)。このための、研究会議等の旅費も必要になることが見込まれる。
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Research Products
(1 results)