2014 Fiscal Year Research-status Report
大学生への調査に基づく金融リテラシー概念の再検討と金融教育プログラムの構築
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26381296
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Research Institution | Shiga Junior College |
Principal Investigator |
小山内 幸治 滋賀短期大学, その他部局等, 教授 (40204177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 圭一郎 松山大学, 経済学部, 准教授 (20453368)
北野 友士 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (90532614)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金融リテラシー / 金融教育 / Jump$tart |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はアメリカのJump$tartの金融リテラシー調査用紙をもとに、日本語版の調査用紙を作成し、7大学約1,800名の大学生を対象に調査を行った。これにより、基礎学力や基本的な金銭管理能力が十分に身についていない学生が一定数存在する可能性を示す結果を得た。また、問題の抽象度が上がると極端に正答率が下がる傾向がみられた。これらのことから、基礎学力と金銭管理能力(もしくは実践力)を身につけることが、重要であることが明らかになった。 また、我々の主要な研究目的のひとつに大学生の学習経験や生活環境・習慣と金融リテラシーとの関係を明らかにすることがあげられている。そのために、前述の調査を基にして、金融リテラシーに影響する要因について統計的な検討を行った。その結果、「入試区分」、「銀行口座を自分で管理」、「免許・車の保有」、「FPに興味がある」、「証券投資に経験がある」、「貯蓄額」、「電子マネーの利用体験」、「新聞を読む習慣」などの項目で統計的に有意な差がみられた。しかし、親年収による金融リテラシーへの影響は不明であった。 さらに、上記の分析と、平成26年6月の金融教育推進会議の「金融リテラシーマップ」も参考に、金融リテラシー調査用紙の見直しを行い、表現を変更したり、より適切な問題への差し替えを行なった。金融リテラシーに影響を及ぼす要因に関する質問もこれまでのものを見直し、「学校教育」、「家庭教育」、「社会教育」の3つの影響要因の質問項目を追加して改訂版の調査用紙を作成した。この改訂版金融リテラシー調査用紙を用いて、2大学約250人の大学生に対し、予備調査を行った。現在、妥当性、信頼性等を含めて、この調査結果について、統計的に分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、「大学生の入学以前の学習経験と金融リテラシーとの関係の把握」については予備的調査を行うにとどまり、また「金融リテラシー概念の細分化と学習指導要領との対応」についてはまだ準備段階にあり、予定よりやや遅れている。これは、①これまでの研究成果や2014年7月に公表されたPISA調査の結果などを考慮した「大学生の金融リテラシー調査用紙」の作成に多くの時間を要したこと、②金融リテラシーマップの公表を受けて国内の金融教育を取り巻く環境が変化したこと、③金融教育を取り巻く国際的な環境やアメリカ視察の準備などの観点から英語での成果発信を優先すべきと判断したこと、などが要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策についてであるが、遅れている「大学生の入学以前の学習経験と金融リテラシーとの関係の把握」、および「金融リテラシー概念の細分化と学習指導要領との対応」については、調査用紙がほぼ確定したため、それを基に具体的に取り組みを始めていく。また、金融リテラシー調査については、平成27年度の早いうちに全国規模で大学生に対する調査を行う予定である。 平成27年度はアメリカを参考に学齢期における金融リテラシーの達成目標の明確化を行うために、アメリカにおける金融教育の現場の視察を行う予定である。 アメリカでの視察内容は次の大きく分けて2つである。①金融リテラシー概念およびNational Standardsの制定過程、教育現場への導入に至るまでの課題などについて、ワシントンDCにあるJump$tartの本部で聞き取り調査を行う。②パーソナルファイナンスを少なくとも1セメスターは履修科目とすべきとしているヴァージニア州、パーソナルファイナンス教育を導入していないメリーランド州、他の科目にパーソナルファイナンス教育の内容を盛り込んでいるニューヨーク州という形で対応の分かれている各州で教育関係者への聞き取り調査を行う。前年度までの調査の分析とアメリカでの調査をもとに、わが国の教育課程における金融リテラシー強化の課題を浮き彫りにする。 平成28年度は、前2年間の研究蓄積を踏まえて、学習指導要領における学習の進捗度に合わせた金融リテラシーの達成目標を明確化し、そのために必要な金融教育プログラムを構築する予定である。その際、必要に応じて我が国における金融教育 や学校教育の現場へのヒアリングなども行い、現実の課題に合わせたプログラム 構築を目指す。
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Research Products
(3 results)