2015 Fiscal Year Research-status Report
今日的な課題に対応した諸教育の成果を取り入れた公民教育カリキュラム開発の研究
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26381301
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
樋口 雅夫 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (70510189)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公民教育 / 法教育 / 金融経済教育 / 消費者教育 / 社会保障教育 / 租税教育 / 主権者教育 / クロスカリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、以下の研究活動を実施した。 第一に、平成26年度に引き続き、公民教育カリキュラムと特に関わりが深いと考えられる六つの「○○」教育、すなわち「法教育」、「金融経済教育」、「消費者教育」、「社会保障教育」、「租税教育」、「主権者教育」に関する文献調査を行った。具体的には、各省庁や都道府県教育委員会、行政部局及び推進団体から公表されている授業実践事例を収集し、学習指導要領に基づく現行の公民教育カリキュラムの枠組との関連を踏まえて分析・位置付けを行った。更に、それぞれの「○○教育」に関連する学会、推進団体等の研究成果である学術論文、実践記録、報告書等の収集及び整理・分析を行うとともに、研究会のシンポジウム等における議論の方向性から、成果と課題を明らかにすることができた。特に「主権者教育」に関しては、平成27年6月に公職選挙法が改正され、平成28年6月19日以降に公示される衆議院議員総選挙又は参議院議員通常選挙から、投票権を有する者の年齢が満20歳以上から満18歳以上へと引き下げられることを受け、とりわけ多くの授業実践が行われたり研究会等が実施されたりしたところであり、多くの授業実践事例等を収集することができ、時宜を得た研究となった。 第二に、平成26年度より継続して収集し、現行の公民教育カリキュラムへの位置付けを行った授業実践事例について、平成28年度の研究の一部先取りとして、次期学習指導要領改訂の動向に留意して公民教育カリキュラムの再構築を行うことを視野に分析視点の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、第一に「公共性の涵養」などをねらいとして現在の初等・中等教育、とりわけ中学校社会科(公民的分野)、高等学校公民科で展開される公民教育カリキュラムの中に位置付けるよう各省庁・団体等から要請されている「法教育」、「金融経済教育」、「消費者教育」など、既存の教科等の枠組に収まり得ない今日的な課題に対応した教育、いわゆる「○○教育」の相互の関係性を授業実践レベルで分析し、共通して認められる内容構成原理と方法を抽出すること、第二に「○○教育」の成果を取り入れて新たに構築されうる公民教育カリキュラムを提示することにある。 そのため、研究二年次にあたる平成27年度は、それぞれの「○○教育」の目標、教育内容、教育方法の抽出及び授業実践事例の収集を引き続き行うとともに、「○○教育」の相互の関連性の分析を行った。平成27年度中には、公職選挙法改正に伴う「主権者教育」充実への社会的要請があり、「主権者教育」に関しては当初の計画以上に授業実践事例が収集できたところではあるが、研究の全体としては当初の研究計画に沿い、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の研究活動を推進することとしている。 第一に、平成28年度は平成26、27年度に引き続き、中学校社会科、高等学校公民科に位置付く六つの「○○教育」に関する授業実践事例の収集及びインタビュー調査を行う。事例の収集に当たっては、複数の「○○教育」を相互に関連させて作成された単元計画に基づくものや、公民教育カリキュラムを超え、学校の全体計画に適切に位置付けて様々な教科等で実施されたものを中心に、事例収集校の選定にあたる。 第二に、平成26年度より継続して収集・記録した授業実践事例及びインタビューの内容を分析し、それぞれの「○○教育」に共通して認められる内容構成原理と方法を抽出することによって、新たに構築されうる公民教育カリキュラムの適用範囲を明確にする。 第三に、「○○教育」の成果を取り入れた公民教育カリキュラムを構築して、関連学会、研究会等において発表するとともに、研究成果報告書を作成して広く教育関係者へ発信することを計画している。
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Causes of Carryover |
当該年度は、研究対象としている六つの「○○教育」、すなわち「法教育」、「金融経済教育」、「消費者教育」、「租税教育」、「主権者教育」に関する文献調査及び授業実践事例の収集を行った。あわせて、それぞれの「○○教育」に関連する学会、推進団体等における研究大会に参加して、最新の研究動向の把握に努めた。当該年度は研究代表者の勤務地である東京近辺から離れた地域での全国研究大会等の開催が想定より少なく、前泊・後泊等に要する経費を縮減することができたことや、特に「主権者教育」に関して東京近辺で数多くの授業実践事例の収集をすることができたことのため、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本研究の最終年度となる。従って、六つの「○○教育」に関する授業実践の参観を引き続き予定するとともに、研究成果を、六つの「○○教育」関係者のそれぞれに発信することが必要となる。そのため、平成26,27年度以上に関連学会、研究会等への参加、発表を行うことを予定しており、平成28年度の助成金とあわせて次年度使用額を活用することで、より一層の研究の進展が期待できる。
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Research Products
(2 results)