2015 Fiscal Year Research-status Report
タブレット端末によるスクリプト及びスクリプト・フェイディング手続きの実証と実用化
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26381303
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
宮崎 眞 明治学院大学, 心理学部, 教授 (60361036)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / 発達障害・情緒障害 / 会話指導法 / スクリプト / タブレット端末 / ソフトウェア開発 / スクリプトフェイディング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、自閉症児に対する会話行動の指導法である①スクリプトおよびスクリプトフェイディング(以下、S・SFと略す)手続きのWindowsタブレット端末を活用した新たな提示方式(以下、T提示と略す)を開発し、②その有効性を実証すると共に、③より日常的に使用可能な操作性の優れたT提示を開発することである。併せて、文カード提示やパソコン提示のS・SF手続きによる自閉症児に対する会話指導についてもその有効性の検証を行うこととした。 ①画像・動画が提示されるタイプのソフトウェアの開発。②スクリプトだけが提示されるタイプのソフトウェアの開発、③画像・動画に加え、その内容について質問文が提示されるタイプのソフトウェアの開発、④児童がひらがな50音を入力できるタイプのソフトウェアの開発。この①~④のタイプを基本型として、研究協力の教員から色々な意見を聞き、改良を続けた結果、計7種類のタブレット端末を活用したS・SF手続きを開発した。これらのT型提示のS・SF手続きを活用した指導を、岩手大学教育学部附属特別支援学校と県立特別支援学校の教員5名が実施した。これらの研究協力の教員と月1回、会議を開催し進捗状況の確認と事例検討を行った。その中の1つの実践を日本特殊教育学会にて発表した。研究最終年度作成する報告書に収録する。 文カード提示のS・SF手続きによる会話行動の指導については、一昨年度に指導を終了し、報告書を作成している最中である。 タブレット端末を使ったS・SF手続きによる会話行動の指導の有効性の実証に関しては、研究協力の5名の教員が参加し、4名の教員からS・SF手続きを使用した会話行動やソーシャルスキルの指導についてプラスの成果を得た。1名の教員については学校用務や行事の関係でS・SF手続きによる指導を実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)タブレット端末を活用したスクリプト提示のソフトウェア開発 既述の通り、この2年間に①画像・動画が提示されるタイプのソフトウェアの開発。②スクリプトだけが提示されるタイプのソフトウェアの開発、③画像・動画に加え、その内容について質問文が提示されるタイプのソフトウェアの開発、④児童がひらがな50音を入力できるタイプのソフトウェアの開発。この①~④のタイプを基本型として、改良を続けた結果、計7種類のタブレット端末を活用したS・SF手続きを開発した。ソフトウェアの開発に関しては、順調に進んでいると判断する。 2)タブレット端末を活用したT型提示の指導とその評価 岩手大学附属特別支援学校と県立特別支援学校において、4名の児童に対して、①様々な絵をタブレットに提示して、2語文で叙述する指導、②困った状況を動画で示し、困った理由を話し、適切に対処する指導、③発話に代わり50音を入力しコミュニケーションする補助代替コミュニケーション手段を兼ねるタイプでのやりとりの指導を行い、成果を上げた。事例は4例と少ないが、全てにおいて当初立てた短期目標を達成できた。T型提示のSSF手続きによる会話指導の有効性を実証できた。 3)文カード提示のS・SF手続きによる指導とその評価 研究1年目(平成26年度)に小学校特別支援学級児童2名の指導に、質問・応答、感情・共感、アルバムを見て思い出を語るなどの課題を設定して指導を行い成果を挙げた。研究2年目は、研究代表者の所属が岩手大学から明治学院大学に代わり、明治学院大学では新たな自閉症児指導の準備をしている所で、タブレット端末を使った会話指導は未実施である。しかし、研究1年目に2名の小学生を対象に4種類の指導を行っており、必要なデータは取れているので、文カード提示のS・SF手続きによる会話指導の有効性を示すことができたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)今後の推進方策 過去2年間に4つの基本型計7種類のソフトウェアを開発し、特別支援学校2校の教員が児童の会話指導に使用し、月1回ケース研究と打ち合わせを行ってきた。研究最終年度である平成28年度は以下のよう研究を推進し研究をまとめ終結させる。 (1)岩手大学教育学部附属特別支援学校において新たに3名の児童生徒に指導を行う。また、岩手県立特別支援学校2校と県内小学校1校において3名の児童生徒に指導を行い、T型提示のSSF手続きによる会話指導の有効性を示すデータを収集する。(2)報告書を作成し広く公開する。内容は①S・SF手続きの解説、②7種類のT型提示のソフトウェアの解説と指導例、③タブレット端末を活用したS・SF手続きによる会話指導の事例報告7編前後、④文カード型S・SF手続きによる会話指導の事例報告6編前後である。(3)学会発表を行うと共に研究論文にまとめる。目下、ソフトウェアに関するテクニカルノート1編と実践研究1編を学会誌に投稿する所まで作業を進めている。また9月に学会発表を行う。7種類のソフトウェアとその実践に関するテクニカルノートを、順次学会誌に投稿する予定である。 2)(次年度使用額が生じた理由) 研究1年次にタブレット端末を9台購入した。研究2年次もタブレット端末9台で過不足なく新たに購入する必要がなかった。旅費に関して岩手県内間(盛岡-北上市)の旅費が必要なくなり、月1回の東京-盛岡の旅費だけとなった。以上のことから16万円余り次年度使用額が発生した。平成28年度は報告書の作成と郵送がある。また、研究最終年度になり、盛岡での打ち合わせを月2回にすることもあるので、東京-盛岡間の旅費の増加が見込まれる。次年度使用額は、報告書の作成と郵送、旅費の増加に充てる。
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Causes of Carryover |
研究1年目(平成26年度)タブレット端末を9台購入した。1台はソフトウェア開発用に研究協力者に預けた。研究協力者はソフトウェアの開発と修正・改善を担当した。その他8台は指導を担当する大学院生や教員が指導に活用した。研究2年目(平成27年度)、タブレット端末数は過不足なく充足し、新たにタブレット端末を購入する必要がなかった。また、研究2年目(平成27年度)に研究代表者が岩手大学から明治学院大学に異動したことから、月1回の岩手県盛岡市から北上市への出張などがなくなり、県内の旅費と人件費が必要なくなった。以上のことから、16万円余り次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究3年目(平成28年度)は研究最終年度であり、報告書の作成と公開を行う。郵送料を含め予算を確保する必要がある。研究最終年度のため、T型提示のタブレット端末を活用したS・SF手続きによる会話指導に協力する特別支援学校の教員との打ち合わせを月2回(東京-盛岡)に増やすことを想定している。また、小学校(奥州市)と特別支援学校(久慈市)の教員の協力が得られることになり、新たな旅費が見込まれる。 タブレット端末の購入について、新たな研究協力者を計画していること、故障の恐れもあることから、1,2台を購入する可能性がある。 以上、①報告書の作成、②旅費の増加、③タブレット端末の補充のため、次年度使用額が必要である。
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Research Products
(3 results)