2016 Fiscal Year Research-status Report
合理的配慮の提供に活かす就学前後の支援情報の機能的翻訳に関する研究
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26381313
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
有川 宏幸 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (80444181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入山 満恵子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40389953)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 合理的配慮 / 情報翻訳 / 発達障害 / 支援ニーズ / 就学 / 幼稚園 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年に実施した研究において、幼稚園教諭は、健診等を通じ何らかの支援の必要性が把握されていた児童について、就学直前の時点で、主に5つの場面(「集団参加の場面」「自己管理」「対人関係」「理解を促す場面」「切替場面」)に重点的に支援の必要性があると認識していたことを明らかにした。 そこで28年度はこの結果をもとに「子どもが必要としている支援を提供するためのチェックシート」を作成した。それを、当該年度に小学校入学予定で、なおかつ健診等を通じて支援の必要性が把握されていた児童について、卒園1ヶ月前に幼稚園担任にチェックを依頼し、一人一人の重点支援場面を把握した。さらに、これらの児童について、就学後の実態を把握するため、小学校担任に新たに作成した質問紙について回答を求めた。なお、質問紙は26年度の調査結果をもとに作成されており、小学校で支援が必要となる場面の様子について問う全15項目で構成されていた。担任は、それぞれの項目について「1.まったくない」「2.あまりない」「3.ときどきある」「4.いつもある」の4件法で回答を求めた。また、調査期間については27年度に実施した予備調査の結果、一学期終了時(4から8月まで)の期間の様子では、子どもの実態の把握が不十分である可能性が示唆されたことから、今回の調査は二学期後半(11月~12月)に実施した。分析は、就学直前に幼稚園教諭によってチェックされた「子どもが必要としている支援を提供するためのチェックシート」の5つの支援場面と、現在の様子について、ピアソンの相関係数を算出した。 結果は、就学直前にチェックした「子どもが必要としている支援を提供するためのチェックシート」の5つの支援場面で、3つの項目を除いた12項目のいずれかで相関がみられ、就学後も引き続き支援の必要があったことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗は、順調に進展しているが、研究者自身の公務や学会等の業務による負担が一時的に大きくなったことと合わせ、研究協力先との研究打合せ日程の調整等の変更などにより、28年度は当初予定していた研究のモニタリングや、研究協力先との打合せが少なくなった。その分、調査結果だけではわからない、実態についての観察機会が少なくなった。これについては改めて29年度に引き続き行い、本研究の教育現場への応用可能性について検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
データの収集など研究の根幹部分の進捗は、おおむね予定通りにすすんでいる。 なお29年度は最終年度にあたる。今後、本研究の成果を教育現場において実際に応用するための整備等について、合わせて検討していくことも社会的に求められる責務である。しかしながら、健診時から就学前後まで、縦断的に一つの支援システムが機能している自治体は少なく、また本研究のように、福祉、教育を含む自治体のバックアップを得ながら取り組めることも稀である。そのため、一般的な支援システムの中で、本研究と同様の成果が得られるかは不明であり、このことは研究開始当初からの課題となっていた。 こうした理由から、異なる支援システムを持つ自治体や教育現場の内情について把握する必要がある。しかしながら、こうした情報は、調査用紙等による研究手法ではほとんどの場合、入手が難しい。自治体で直接現場に関わる職員、教員を対象に、ヒアリングも合わせて行う必要性がある。また、同様の観点から、国内外の研究者との積極的な情報交換も合わせて行いながら、最終年度以降の展望についても検討していく。
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Causes of Carryover |
研究代表者が学会大会運営の指揮をとらなければならず、また公務においても不測の案件などが発生し、その対応等に追われていたため、予定していた訪問調査の頻度が少なくなった事が大きな理由である。 また交通費なども、電車の利用を中心にし節約していたことも大きい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に実施できず、29年度には予定していなかった訪問調査を実施することに合わせ、当初は予算の関係で実施は予定していなかったが、海外の研究の動向を把握するため、国際学会へ参加する。なお、今年度実施予定の調査については計画通り実施する。
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