2014 Fiscal Year Research-status Report
特別な支援を要する児童生徒の行動問題への機能的アセスメント・アプローチの活用
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26381314
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
加藤 哲文 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (90224518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井澤 信三 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (50324950)
松岡 勝彦 山口大学, 教育学部, 教授 (70312808)
村中 智彦 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (90293274)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 特別な支援を必要とする児童生徒 / 行動問題 / 機能的アセスメント・アプローチ / 応用行動分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、文部科学省の「小中学校の通常の学級における特別な教育的支援を必要とする児童生徒の実態調査」の結果(文部科学省, 2012)を踏まえて、彼らの行動問題(加藤, 2000)の解決のための機能的アセスメント・アプローチ(Functional Assessment;以下、FAとする)の開発を目的としている。このアプローチは、通常の学級の教師が使用できる、児童生徒の行動問題の解決に向けたFAのツールとマニュアルを作成し、さらに、そのツールとマニュアルを実行・定着化させるためのコンサルテーションと研修プログラムを含む包括的なシステムである。 1年目の26年度では、小中学校において、行動問題を示す児童生徒に対するFAに関する内外の先行研究についてレビューを行った。具体的には、対象児の特徴(障害種、年齢、行動問題など)、機能的アセスメントのタイプや効果量、介入方法と効果量、対象者の生活スタイルの改善を観点に分析を行った。この作業を通じて得られた最新の研究情報は、量質ともに広範囲に渡り、これらの結果をもとに、FAツールを試作するためのデータを集積した。 また、簡易型FAツールの試案では、研究代表者及び分担者がそれぞれの研究フィールド、即ち、小中学校や特別支援学校、福祉施設を通じて活用してきた臨床、実践の成果から、FAツールを小中学校の教育現場に普及させるための試案はできたと考えられる。 このように、研究代表者及び分担者が、それぞれの研究フィールドや臨床、実践活動を通じて活用してきた成果をもとに、簡易型FAツールを試作した。これらの成果は、平成26年11月23~24日、大阪国際会議場で開催された日本LD学会第23回大会において、「行動問題の解決ツール」というテーマによる自主シンポジウムで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の26年度では、当初の研究計画通り、FAに関する内外の先行研究のレビューと、臨床や実践活動を通じて活用してきた成果をもとに簡易型FAツールを試案したが、これらを通じて、簡易型FAツールのソフト(試案)と使用マニュアル作成を実現するための有益な情報の収集、分析、整理ができたと考えられる。 先行研究のレビューでは、関連領域である特別支援教育や障害者福祉、応用行動分析において、行動問題を示す児童生徒に対して機能的アセスメントに関する内外の過去10年間の文献を幅広く収集した。さらに、米国シカゴで開催された国際行動分析学会において、ポスター発表・シンポジウムに参加し、内外の研究者との討論を行い、最新のFA研究の情報収集も行った。具体的には、対象児の特徴(障害種、年齢、行動問題など)、機能的アセスメントのタイプや効果量、介入方法と効果量、対象者の生活スタイルの改善を観点に分析を行った。この作業を通じて得られた最新の研究情報は、量質ともに広範囲に渡り、これらの結果をもとに、FAツールを試作するためのデータが集積できたと考えられる。 また、簡易型FAツールの試作では、研究代表者及び分担者がそれぞれの研究フィールド、即ち、小中学校や特別支援学校、福祉施設を通じて活用してきた臨床、実践の成果から、FAツールを小中学校の教育現場に普及させるための試案はできたと考えられる。 以上のことから、(2)おおむね順調に進展していると自己点検による評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の27年度では、1年目の成果をもとに、小中学校の通常学級に在籍し、行動問題を示す児童生徒に対するFA、支援計画の立案と実行、介入の評価という一連の介入プロセスを含めた簡易型FAツールのソフト(試案)と使用マニュアルを作成する。簡易型FAツールのソフト(Windows、Mac のCD-ROM版)の作成では、教師のデータ入力を支援する、易しくできるような機能を取り入れ、入力方法や専門用語の説明が付加されるように工夫する。併せて、支援計画を実行し、児童生徒の変容の記録を教師自身が簡単に入力できる、可視化(グラフ化)できる機能を多用する。また、ソフトの使用マニュアルでは、レビューの成果から、小中学校教師が実施可能な行動問題を示す児童生徒への機能的アセスメントの一連の方法や手順を示したマニュアルを作成する。小中学校の教師が無理なく容易に使えるツールとなることを目標に、実施に要する時間やコストを軽減し、FA実施の技術的な複雑さを改善する。行動問題に対する機能的なアセスメントだけではなく、アセスメント結果に基づいて、「どのような介入方法や手順が適切なのか」についての具体的な実践事例集や活用事例を付加する。実践事例集や活用事例では、行動問題の機能に基づく効果的な支援方法を一覧できるようにして、教師の置かれた支援環境に即して選択可能な方法を採用する。実践事例では、レビューの成果から、応用行動分析に基づく各種技法を幅広く採用し、特別な支援を要する児童生徒を含む学級集団や学校組織への支援を見据えたものとする。 以上の簡易型FAツールのソフト(試案版)を活用し、28年度の簡易型FAツールのソフト(試案)に基づく学校コンサルテーションの実施や指導者研修プログラムの開発に向けて、研究協力者の協力のもとに、学校現場において、教師の受容性や社会的妥当性などをモニタリングする実証的調査を実施する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に、簡易型FAツールのソフト(試案版)を作成し、これを用いて複数の学校現場でモニタリングを行った。その際に、当該の学校においてコンピュータ(ノート型)及びカラープリンターを使用する予定であったが、これらの機器を導入する予定であった2校の学校が都合でモニタリングに参加できなかったため、これらの学校への機器の導入を1年延期することとした。したがって、これらの機器の購入を平成27年度にして、予定していた2校に導入しモニタリングを行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に予定していた物品費の内、21万円分を、平成27年度に繰り越して、平成26年に購入予定であったコンピュータ(ノート型)及びカラープリンタを購入することとする。
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Research Products
(13 results)