2014 Fiscal Year Research-status Report
アイ・トラッカーを用いた吃音検査法の開発に関する研究
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26381316
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
村瀬 忍(廣嶌忍) 岐阜大学, 教育学部, 教授 (40262745)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 吃音 / 視線 / 言語処理 / 事象関連電位 / アイトラッカー / 視線計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
【方法】被験者は成人吃音者3名および成人非吃音者8名であった。用いた言語刺激は、村瀬ら(2013)で使用した文章と同じ150文であった。それらは、意味的逸脱のある語を文末に含む逸脱文75文と、逸脱語と同じ動詞を意味的逸脱のない文章に含む正文75文であった。被験者はモニターから65センチ離れて座り、モニター上に表示された文章を黙読した。さらに、被験者は黙読後すぐに文の意味の正誤を判断した。正誤の判断はモニターの左端に表示された○と×の記号の対応する方に、視線を移動させる方法でおこなった。文章は30文が連続して表示され、30文毎に被験者は数分の休憩をとった。被験者が文を黙読する際に生じた視線を、アイトラッカーを用いて計測した。用いた視線計測装置はtobii社製TX300であった。視線の計測は、各語の注視時間とし、文の正誤が正しく判断できた文章のみを対象にして、逸脱語の注視時間と非逸脱語の注視時間の差を測定し、吃音者と非吃音者とで比較した。 【結果】①吃音者でも非吃音者でも、文末の4語目の注視時間が長いことがわかった。②吃音者における誤文の4語目の注視時間は、非吃音者より139ミリセカンド長くなることがわかった。 【考察】事象関連電位を記録することで、吃音者の言語処理が非吃音の言語処理とは異なることが発見されている。本研究では、脳波の計測より簡単な方法である視線計測を用いることにより、吃音者と非吃音者の言語処理における時間的相違を検出できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、吃音者の黙読課題での視線を観察し、その特徴を明らかにすること、さらにその結果に基づいて、アイトラッカーを用いた吃音の検査法を開発することである。これまでの研究では、単文を刺激文として用いて吃音者の視線の特徴について観察した。その結果、吃音者と非吃音者には違いがあることがあきらかになった。具体的には、事象関連電位記録を用いて明らかにされた吃音者の意味処理の遅れが、語の停留時間の遷延という結果で再現された。このように、対象とした言語刺激が単文ではあるものの、黙読時の吃音者の視線が非吃音者の視線とは異なるという結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまでの方針通り、吃音者と非吃音者との言語刺激に対する視線の比較を行う。 これまでの研究で得られた結果を確認するためにも、刺激文を検討し、結果の追試を行うとともに、被験者を増やして検証もすすめる。
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Causes of Carryover |
今年度繰り越しが生じた理由は、視線解析ソフトを購入せず、1年ライセンスで使用したため。視線解析ソフトを購入すると今年度の予算内で装置の設備を充足させることができず、研究が遂行できないと考えられたため、ソフトはライセンスでの使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度の残額と合わせ、視線解析ソフトを購入予定である。
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