2014 Fiscal Year Research-status Report
障害者権利条約に基づく学校教育の構築と合理的配慮に関する比較教育方法学的研究
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26381321
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
玉村 公二彦 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (00207234)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 障害者権利条約 / 合理的配慮 / インクルーシブ教育 / インクルージョン / 共生社会 / 特別支援教育 / 教育方法学 / 比較教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、障害者権利条約の実施にむけた学校教育の再構築の課題を明確にし、学校教育における「合理的配慮」について、教育目的、目標、教材、教育方法、教育評価などに焦点をあて、そのあり方を比較教育方法学的に検討することである。 国連・障害者権利委員会や締約国会議における教育議論の分析として、権利委員会からは、第24条教育についての報告において、「効果的な教育と完全なインクルージョンを確保するために、学校と教材がアクセシブルであること、ならびに障害のある人が必要とする個別化された合理的配慮と支援が提供されることを確保する立法措置およびその他の措置」が示される必要があることが要請されており、各国の報告と勧告にも教育方法における合理的配慮の提供の実際について課題として認識されていることを明確にした。その上で、2014年度の権利委員会におけるデンマーク・ニュージーランド・韓国などの各国報告について情報を収集し検討をおこなった。 各国の分析として、オーストラリアからの国連権利委員会報告を検討し、あわせてクィーンズランド州における「合理的調整(reasonable adjustment)」の提供のシステムをまとめ、学会報告を行った。また、アメリカでの教育の場での合理的配慮について論文を入手し、判例を中心に翻訳を行った。 さらに、障害者差別解消法の成立に即して、その内容を検討し、人権保障という観点から障害者差別の禁止と合理的配慮の提供についてその内容について検討を行い、基本方針等の検討の指針を示した。また、日本における教育実態に関する資料の収集及び実践的研究としては、インクルーシブ教育システム構築モデル事業を中心として鹿児島大学、長崎大学等の情報を収集し、奈良教育大学附属学校園でのこれまでの通常学級での蓄積を整理し、インクルーシブ教育システムモデル事業への申請へとつなげた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
障害者権利委員会への各国報告の内容的検討を行うことによって、各国における障害者権利条約の実施の状況が継続的に把握できるようになってきた。また、その中で、教育の実施状況については、合理的配慮が重要な課題となっていることも明確になったので、情報収集のあり方が定式化でき、今後の研究作業の方向も明確となった。 各国の状況ついて、合理的配慮の提供のシステム構築の観点から、アメリカの判例検討、オーストラリアでの「教育における障害基準」とクィーンズランド州での提供システムの検討などを進めることができた。イギリスなどについては、情報や研究の把握が今後の課題となっている。 教育実践現場での「合理的配慮」については、事例が蓄積されつつあるが、その教育方法学的で系統的な吟味が弱いものとなっており、事例の教育学的吟味が課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では障害者権利条約に基づく学校教育の再構築を課題としているが、各国の特別ニーズ教育には、一般教育制度の到達点の違いや多様な発展があり、一様な比較はできない。その点では、国連・障害者権利委員会に提出される各国の報告を検討するという方法が有効であり、それを進めている。しかし、権利委員会への報告と権利委員会からの勧告は概括的なものが多く、教育目的、目標、教材、教育方法、試験を含む教育評価などの教育方法に即してより詳細な実証的検討が求められている。特に、これまで、「合理的配慮」の概念が未整備だった国では、合理的配慮の提供は今後の課題となっており、これまで蓄積のあるアメリカ・イギリスなどの国での学校教育と特別ニーズ教育実践から示唆を得ることを強めたい。
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Causes of Carryover |
物品と謝金の端数の残金である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
謝金として、次年度4月の翻訳及び資料整理に使用する。
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Remarks |
資料室に国連障害者権利条約に関する若干の翻訳等を掲載している。
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Research Products
(9 results)