2014 Fiscal Year Research-status Report
APD(聴覚情報処理障害)と促音認識-ギャップ検出でAPDは語れるか?-
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26381326
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
立入 哉 愛媛大学, 教育学部, 教授 (90294777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花熊 暁 愛媛大学, 教育学部, 教授 (60172946)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | APD / 聴覚情報処理 / 聴覚情報処理障害 / 促音認識 / GINtest / GAP / GAP検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
A.研究目的:韓国人が日本語を学習する際に、日本語の特殊音素の1つである促音の習得に難渋するとの報告がある。今回、このことを利用し、韓国人留学生が日本語の学習に伴う促音の弁別能の変化とGINtestの結果について検討した。 B.研究方法:1)対象は、①初級群:韓国人留学生(初級学習者) 4名、日本語のみでのコミュニケーションが困難であり、日本在留年数は3カ月程度の者。②上級群:韓国人留学生(上級学習者) 4名、日本語のみでのコミュニケーションが可能で、日本在留年数は3年以上の者。③日本人群:日本語を母語とする大学生 8名とした。 2)課題は、①自然に発声された「あた」を元にデジタル的に無音持続時間が、90~250msec(5msec間隔)の音を作成した。これをヘッドホンにて両耳に提示し、「あた」と聞こえたか、「あった」と聞こえたかを強制選択で回答させた。促音語、非促音語の弁別の幅を「知覚範疇化範囲」として群ごとに求めた。②GIN testを用い、GAP検出閾値を計測した。2~20msecのノイズが切れる空間(GAP)があり、被験者には音が切れたと思ったところでボタンを押させた。 C.研究結果:促音弁別実験では知覚範疇範囲とGAP検出閾値を求め、群間の差を検定した。この結果、上級学習者がより日本人に近い結果を示した。学習段階によって促音の弁別がより日本人の弁別閾値に近づくことが観察され、またGINtestにおけるGAP検出能も向上した。 D.考察:時間分解能が言語学習によって変化しうることを示しており、GINtestの結果を解釈する上で大きな知見を得ることができた。また、促音の弁別においては、20~30msecの幅で明確な範疇化が行われていることから、促音を用いた語音弁別リストを作成する際はこの範疇化範囲を閾値として採用できるとの知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していた第1実験は仮定通りの結論を得た。 第1実験の結果を日本聴覚医学会にて口頭発表を行い、有意義なディスカッションをすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第2実験として、促音に加えて、長音についての検討を加える。 また、第1実験の結果を58回日本聴覚医学会にて報告したところ、フロワーからの下記の指摘があった。「Nature of Auditory Processing Disorder in Children Pediatrics 2010;126;e382; David R. Moore, Melanie A. Ferguson, A. Mark Edmondson-Jones,Sonia Ratib and Alison Riley」 この論文では、「APD is primarily an attention problem.」と述べられており、Disorderとの見解を否定している。そこで、GAP検出能は生来的な閾値なのか? 学習しうる能力なのか?なのかにしぼって考えるために、長音の実験に加え、小学校低学年から高学年時次の児童を対象に、GINtestの閾値の変化を測定する実験を加える予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者である花熊暁が教育学部附属特別支援学校の学校長(併任)の最終年度となり、年度末に残務処理が重なり、本研究に携わる時間が十分に確保できなかった。 このため、年度末に拙速な研究を進めるより、平成26年度末をもって、学校長併任が解けるため、平成27年度に研究時期を遅らせることにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究分担者 花熊暁の分担範囲である学習障害児との判別については、学習障害に関する検査・診断にかかる検査用紙等の消耗品の経費が必要である。次年度使用となった額については、当初研究計画の通り、本研究における被験児について、学習障害児が含まれないよう検査・診断するための検査用紙等の消耗品の購入に充てる。
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