2014 Fiscal Year Research-status Report
クリッカ-を活用した幼稚園教師の行動観察力の可視化による力量形成
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26381331
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Research Institution | Hokkaido Bunkyo University |
Principal Investigator |
後藤 守 北海道文教大学, 人間科学部, 教授 (00002478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 進一 北海道文教大学, 人間科学部, 教授 (20310104)
川端 愛子 北海道文教大学, 人間科学部, 助手 (60584034)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 行動観察力 / 幼稚園教師 / ペンギンメソッド / クリッカ- / 振り返り |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は学校現場において重要な課題の一つである「かかわり行動に困難をきたす子どもたちに対する教師の適切な対応を支える力」の1つとして「行動観察力」に着目した。第1次研究では、インクルーシブ教育を目指す特定の幼稚園を抽出して研究協力園とし、保育場面をVTR録画した資料を視聴させ、その後、引き続き「興味深い場面」と「検討の必要ありの場面」をクリッカ-(PF-NOTEプロトタイプ)を用いて抽出させ、可視化グラフを作成させた。この可視化グラフは対応する映像とリンクされており、即座にその場面の振り返りが可能となっている。 第1次研究では、文教ペンギンルーム(北海道文教大学子育て教育地域支援センター)での保育実践場面のVTR資料を用いて、研究対象幼稚園の教師たちの現時点での「行動観察力」の特徴の把握に努めた。 文教ペンギンルームの保育実践は地域に開放された「子育て支援」の活動として位置付けられており、ペンギンルームの専任スタッフである、われわれ(後藤 守・川端愛子)によって開発された「ペンギンメソッド」をベースにしている。本研究のねらいとする幼稚園教師の行動観察力はこの指導法のコンセプトとして設定されている「関係的視点から子どもの行動をとらえる力」と「子どもの行動を流れの中で捉える力」の2点から支えられている。第1次研究では、この2つの力が内包された「幼稚園教師の行動観察力」をクリッカーを用いた可視化資料から読み取ることに努めた。 第1次研究の成果については「幼稚園教師の行動観察力の可視化に関する研究-科研費による研究推進のためのパイロットスタディ-(コミュニケーション障害研究第15号、2014)」にまとめられている。 また、これと並行させて、ニュージーランドのプレィセンターとインクルーシブ教育に関する研究資料の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、学校現場において重要な課題の一つである「かかわり行動に困難をきたす子ども達に対する教師の適切な対応を支える力」として「行動観察力」に着目し、幼稚園教師にこの力量を形成させることを目的にしている。平成26年度に予定されていた研究の取り組みは、研究対象幼稚園の園長が本研究プロジェクトの研究分担者でもあることから、おおむね順調に進められた。次の4点がその主な理由としてあげられる。 (1)分析素材になったペンギンメソッドによる保育実践のVTR資料の準備が可能であったこと: すでに、開始されていた科研費による研究「教職志望学生の行動観察力の可視化による力量形成(平成23年度~25年度)」の取り組みによって、ペンギンメソッドによる指導法をほぼ習得していた学生たちの協力が得られたことがあげられる。このことによって、分析用のペンギンメソッドによる保育実践場面のVTR資料の確保が可能となった。 (2)分析対象となった保育実践VTR資料の適切さ: 今回、保育実践分析対象の資料になったVTR資料が学生たちがチーフティチャーとサブティチャーになったことによって、幼稚園教師たちが抵抗感がなくクリッカ-を打つことが可能であったこと。 (3)クリッカ-による分析の簡便さ: 今回の分析に用いたクリッカ-は中島 平准教授(東北大学)が開発したもので、クリッカ-分析による可視化グラフの部分の映像を即座に再生し視聴することが可能であることが関係している。また、クリッカ-による分析の担当者(研究分担者)がこのクリッカ-の機器操作と分析に習熟していたことも大きく関係している。 (4)研究対象の幼稚園の選定の適切さ: 第4の理由として、研究対象となった幼稚園の教師たちが保育実践と研究に前向きの姿勢を持っていたことががあげられる。このことは、今後の研究の継続にとっても大きな意味を持つと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究の実施方策(第2次研究)として、次の4点があげられる。 (1)平成26年度の第1次研究で得られた幼稚園教師の可視化資料と1年後のクリッカ-分析による可視化資料との比較分析:1年間の時間をおいて実施した同一の保育実践資料の分析による可視化グラフの特徴的な変化を通して、幼稚園教師の行動観察力の変化を縦断的に追跡する。 (2)第1次研究で得られた幼稚園教師の可視化資料と熟達者の可視化資料との比較分析: 第1次研究で得られた幼稚園教師たちの保育実践場面を収録したVTRによる可視化グラフと同一のVTR録画資料を対象にした熟達者の可視化グラフを比較することによって、他者の視点についての気づきを促すことが可能となる。 (3)当該幼稚園へのペンギンメソッドの導入: ペンギンメソッドは我々が開発した関係力育成プログラムの略称である。このペンギンメソッドは、対人、対物関係における関係力を重視している。そこでは、子どもの表出行動を適切に受け止める「応答的環境」が求められている。第2次研究では、実際にこのペンギンメソッドによる保育実践を進めることによって「関係的視点から対人、対物関係を重視する視点の精度が高まること」が推測される。すでに、当該幼稚園に、ペンギンメソッドで必要とされている「場の構成作り」のための円形の舞台と大型のブロックが組み入れられる予定にある。このことによって、幼稚園の日常の生活の中に、ペンギンメソッドによる関係力育成の場が設定されることになる。 (4)国内のニュージーランド型プレィセンターの視察及び研究成果のまとめ: ①第1次研究でニュージーランドに渡航し収集を行った研究資料とあわせて、国内のプレィセンター実施施設の訪問を実施し、資料の収集をおこなう。
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Causes of Carryover |
平成26年度に設置予定の指導用の舞台(特注)が当該年度に購入できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に指導用の舞台(特注)の購入の費用に充当させる。
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Research Products
(6 results)