2014 Fiscal Year Research-status Report
量子ホール系におけるナノスケール核スピン共鳴イメージング
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26390006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 克之 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30451511)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 核スピン共鳴 / 量子ホール効果 / 走査ゲート顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
奇数ランダウ準位充填率nu = 1で、量子ホール効果ブレークダウンで生じる核スピン偏極強度の2次元空間分布を走査核スピン共鳴顕微鏡で可視化することに成功した。 この実験は、GaAs/AlGaAs量子井戸構造を加工して作成したホールバー内で電流励起核スピン偏極を行ながら、探針直下に交流電界を照射し局所的な核スピン共鳴を行い、それに伴う縦抵抗の変化量を捉えることにより行った。探針を走査しながらこれらの一連の測定を繰り返した結果、ホールバーの片方の端に沿ったパターン、ホールバー全体に現れる振動パターンをそれぞれ異なる試料で発見した。それぞれ、ホールバー端またはバルク領域で生じる量子ホールブレークダウンに伴い生じている核スピンを捉えたと解釈できる。 核スピン偏極の強度マッピングの成功に加え、電子スピン偏極の空間分布を反映した核スピン共鳴スペクトラムの共鳴周波数のずれ、いわゆるナイトシフトの1次元空間マッピングにも成功した。これは、ホールバー端領域で生じる量子ホール効果ブレークダウン状態で、ホールバー両端間の直線上の各点で核スピン共鳴スペクトラムを測定し、ナイトシフトを空間マップすることで行った。その結果、核スピン強度の大きなホールバー端付近ではナイトシフトが大きく、ホールバーのバルク領域にいくに従い、ナイトシフトが急激に減少することが分かった。これらの結果から、我々が開発した走査核スピン共鳴顕微鏡により、量子ホールブレークダウンの電子・核スピン偏極の両方の空間分布を捉えたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
26年度は、予備実験で得られている核スピン共鳴1次元マッピングを2次元マッピングに拡張し、ホールバー全体における電流励起核スピン偏極の均一性を調べることが目的であったが、この目的を達成できた。この成果に加え、27年度に実施予定であったナイトシフトによる電子スピン分布のマッピングも可能であることを見出した。したがって、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
量子ホール効果ブレークダウンによるバルク全体にわたって生じる核スピン偏極を用いて、量子ホール状態での電子スピンの実空間マッピングを行う。電子スピン偏極を捉えるためにはナイトシフトを測定する必要があるが、2次元マッピングにおいてすべての点で核スピン共鳴スペクトラムを測定するためには膨大な測定時間を要する。時間を節約するため、スペクトラムをとる代わりに周波数を固定した交流電界を照射し核スピン緩和をマッピングする手法を用いる。
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Causes of Carryover |
測定上の問題があった場合に高精度測定機器を購入しようとしていたが、測定がうまくいったため見送ったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定よりも実験準備が早く整ったため、今年度の実験回数を増やす予定である。それに伴う液体ヘリウムの使用増加分に充てる予定である。
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