2014 Fiscal Year Research-status Report
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26390007
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小鍋 哲 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (40535506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 貴博 東京理科大学, 工学部, 講師 (30408695)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光電変換 / 熱電変換 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 単層黒リン |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、多岐にわたる科学技術分野でエネルギー変換に関する研究開発が進められているが、物性物理学分野には、新しいコンセプトに基づくエネルギー変換プロセスの創出とその学理の創成が求められている。本研究では、低次元ナノ物質で顕在化する量子効果を積極的に活用した新奇なエネルギー変換プロセスの物理機構の解明とそれを実現する機能性ナノ材料の提案を目的としている。今年度は新規2次元材料として大きな注目を浴びている、(1)単層遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)と(2)単層黒リン(フォスフォレン)の2つの材料に注目し、その熱電特性について理論的な研究を行った。(1)については、外部磁場を印加することなく、エネルギーバンドのバレー自由度に依存した大きなネルンスト効果(=バレーネルンスト効果)が生じることを予言した。この現象は、TMDCの特徴であるベリー曲率、バレースピン結合、そして大きなスピン軌道相互作用が協調することで生じる。また(2)については、密度汎関数法と半古典的輸送理論を用いることで、フォスフォレンを10%程度引っ張ることにより熱電パワーファクターが伸張前に比べ150%も増大することを明らかにした。パワーファクターの値そのものも他のフレキシブル熱電材料に比べ、2桁以上大きい。この計算結果は、引張制御によりフォスフォレンの熱電特性が飛躍的に延びることを示しており、高性能熱電材料としての応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた原子層材料の光電・熱電物性に関する研究課題はいずれも順調に進んでいる。さらには当初予定していなかった新規原子層材料である単層黒リンの熱電物性について、重要な知見を得ることができた。以上の研究成果について、論文や国際会議で発表するとともに、解説記事を執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り引き続き研究を行う。特に、平成27年度は原子層材料の光電物性の研究にさらに力を入れ、低次元ナノ材料における新規エネルギー変換プロセスを開拓する。
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Causes of Carryover |
当初参加を予定していた国際会議の出席をやむを得ずとりやめたため残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度は原子層材料の新奇熱電物性を解明・予言するなど大きな進展があった。H27年度は、次年度使用額と合わせ、国内・国際会議に積極的に参加し、研究成果を精力的に発表する。
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