2015 Fiscal Year Research-status Report
グラフェン・プラズモンを用いた単層原子膜での光制御
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26390013
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
落合 哲行 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主任研究員 (80399386)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グラフェン / プラズモン / 回折格子 / 非線形光学 / SHG |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンを加工し、単層原子膜で光を制御することを目的としている。 今年度はグラフェンのプラズモンを用いた2次非線形光学応答に注力した。そのためDirac型の分散を仮定し、衝突項を無視したBoltzmann方程式を摂動的に解くことで、2次の非線形光学伝導度の簡単な表式を導出した。いまの場合、系が反転対称性をもつため、非線形伝導度の最低次の項は空間微分が1回入ったものになる。この項は微分が入っているために大きい波数成分が重要な寄与をする。また、非線形応答の常として、局所場の増強効果が重要である。グラフェンのプラズモンはこの両方の性質をもつために、非線形光学応答の増強が期待できる。但し、空間変調のないグラフェンの場合、光円錐の関係により、外から光を入射しただけでは強い応答は得られない。 そのため、前年度に得られたグラフェンを回折格子にのせることで得られるフォトニックバンド構造を利用した。これによるSHGのスペクトルは期待どおり、基本波と倍波がグラフェン回折格子系の quasi-guided mode を励起するときに大きな増強を示す。次いで、グラフェン回折格子系に平面波を照射した場合のDC電流 (photon drag current)がプラズモンにより増強される効果を調べた。この場合、定式化のうえでいくつか問題が生じることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回折格子を用いることで、グラフェンを brute force で加工することなしに、プラズモンの強い空間変調が得られる。また、それによる具体的な非線形光学効果(THz帯でのSHGの2重増強)を数値シミュレーション上で実証できた。しかし、これも応用上重要な photon drag current において定式化の問題を抱えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Photon drag current における定式化の問題を解決する。同様の問題は電子の古典流体力学的な取り扱いでは生じない。なので、この手法を参考にする。また、2次元系に固有の問題との見方もあるので、3次元から膜厚ゼロの極限をとるという方向も模索する。また上記の成果と合わせ会議や誌上で発表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は2万円あまりと少額であり、ほぼ計画通りである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に誌上や国際会議等の発表にともなう諸経費に使用する。
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