2014 Fiscal Year Research-status Report
大気圧CVD法酸化物半導体ナノワイヤーの形状及び表面制御と高感度ガスセンシング
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26390029
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
寺迫 智昭 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (70294783)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸化スズナノワイヤー / 透過電子顕微鏡 / ガスセンサ / 酸化ガリウムナノワイヤー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにスズ(Sn)粉末と水(H2O)を原料、スパッタ法で堆積した金(Au)薄膜を触媒に用いたAP-CVD法によるSnO2 ナノワイヤー(NWs)の成長には成功していたが、局所構造の詳細は明らかになっていなかった。今回、透過電子顕微鏡(TEM)観察及び制限視野電子線回折(SAED)測定により、NW先端に見られる微粒子がAuであり、単結晶のNWsが気相-液相-固相(VLS)機構を介して成長していること、またAuの一部がNW中に取り込まれている可能性があることが明らかになった。 現在、意図的に不純物を添加していないため、NWsの電気的特性は主に化学量論組成からの逸脱によって生じる真性欠陥もしくは残留不純物によって支配されていると考えられる。そこで原料供給比を変えて成長実験を行ったところ、成長条件によってはSnO2以外にSnOが混在していた。SnOはp型伝導性を示すことから、センサの高感度化を阻害する可能性もあり、これを如何に抑制するかも重要な課題の一つと言える。 無添加SnO2 NWsを基板から削り取り、αテルピネオール中に分散させ、これを予めクロスフィンガーパターンでAu電極が形成されているアルミナ基板(裏面にはヒータ用Pt電極を有する)に滴下、塗布することでガスセンサを試作した。試作したガスセンサを8ppmのエタノール雰囲気中で主に動作温度をパラメータとしてセンシング特性を評価したところ、430℃で感度S(エタノール供給停止時の抵抗値/エタノール供給時の抵抗値)が3.5と最大であった。更なるセンサデバイスの高感度化、再現性の確保を目的に超音波分散と遠心分離を用いたNWsのサイズによる選別の可能性を検討している。 SnO2 NWsの比較対象材料として、β相酸化ガリウム(β-Ga2O3)のナノ構造成長にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ナノワイヤー(NWs)の成長に使用している自作のCVD装置の電気炉が断線することが3度あり、その修復に時間をとられ、酸化亜鉛(ZnO)NWs及びZnO(コア)/SnO2(シェル) NWsの成長に至らなかった。その一方で、熱処理に使っている電気炉をCVD用に転用した装置を用いて新たに酸化ガリウム(Ga2O3)ナノワイヤーの成長の可能性を明らかにした。これは、今後のコア/シェル構造のNWsを用いたガスセンサをデザインする上での自由度を加える成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度未完もしくは未着手であった(1)ナノワイヤー塗布型センサを試作するに十分な収量を得るための酸化亜鉛(ZnO)ナノワイヤー(NWs)の成長条件の探索、(2)ZnOをコア、酸化スズ(SnO2)をシェルとするコア/シェル構造 NWsの成長と局所構造評価、(3)超音波分散と遠心分離併用でのNWsサイズの選別の可能性の検討から着手する。 またこれらと並行して平成26年度に提出済みの実施計画に基づいて、(4)NWs物性評価に用いる光伝導(PC)スペクトル測定系を構築する。当該PC測定システムは、NWsのセンシング特性を支配するであろうNWs中の格子欠陥や残留不純物について有益な情報を提供するものと期待している。併せて、ストレージ・オシロスコープも組合せることでセンサの応答特性とも関係する光生成キャリアの時間的な挙動を明らかにすることも視野に入れている。 上述の(1)及び(2)に一定の成果があったと判断された時点で不純物添加によるNWsの電気伝導度制御の可能性について検討する。現時点では、ZnO NWsには塩化ガリウム(GaCl3)、SnO2 NWsにはアンチモン(Sb)をn型不純物原料の候補と考えている。不純物添加の効果は、フォトルミネッセンス(PL)測定や(4)で構築したPC測定システムで評価する。また無添加NWsで作製したガスセンサと不純物添加NWsで作製したガスセンサのセンシング特性をガス濃度、動作温度を変えて評価し、比較することによっても不純物添加の効果を明らかにする。これに引き続き、サファイア基板上への垂直配向NWs群の成長とこれを用いたガスセンサの検討へと研究を展開していく予定である。
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