2014 Fiscal Year Research-status Report
球形からロッドへ:高速重イオン照射によるナノ粒子の形状変化の機構解明
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26390032
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
雨倉 宏 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームユニット, 主席研究員 (00354358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 健一郎 独立行政法人物質・材料研究機構, 科学情報室, 研究員 (50354353)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高速重イオン / 金属ナノ粒子 / Ion shaping / 照射誘起楕円変形 / プラズモニクス / イオンハンマリング / イオンビーム / 直線二色性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は計画通りに以下の2つの課題について研究を実施した。 (1) ロッド化効率のSiO2媒質深さ依存性: イオンハンマリング(IH)効果によりSiO2媒質が球形ナノ粒子を面内方向に圧縮してロッド化変形を起こさせるのであれば、その効率はSiO2膜中の深さによって変化することが予想される。本実験ではイオン注入法でZnナノ粒子をSiO2中の平均40 nm程度の深さに形成した試料およびその上にCVD法によりSiO2膜をそれぞれ100, 300, 1000 nm堆積させた試料を準備した。そして高速重イオンとして200 MeVのXeイオンを照射し、誘起されるナノ粒子のロッド化変形を直線二色性分光法により高感度に検出した。得られた結果は、ロッド化の効率はほとんど膜厚に依存しないというものであった。IH効果を否定する結果がまたひとつ得られた。 (2) 規則配列した単分散ナノ粒子への高速重イオン照射: 電子線リソグラフィー(EBL)により規則配列した金ナノ粒子に対して高速重イオン照射を行い、電子顕微鏡観察により誘起される形状変化を、顕微分光法により誘起される特性変化を評価する課題である。EBL試料は豪州の研究協力者から供給された。EBL法ではよく制御された形状のナノ粒子を形成できるが、非常に限られた領域にしか適用できず、またロッド化のためには絶縁体であるSiO2中にナノ粒子を埋めることが必須であり、それがさらに測定を難しくする。 顕微分光光度計を用いて、ロッド化を評価するための顕微直線二色性分光を試みた。試行錯誤の結果、信号らしきものは得られたが、信頼できる測定のためには更なる改良が必要であり現在奮闘中である。また透過電子顕微鏡用の試料作製も試みたが、ナノ粒子は非常に限られた領域にしか存在せず、丁度そこを削りだすことは難しく、改善策を模索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は(1) ロッド化効率のSiO2媒質深さ依存性と(2) 規則配列した単分散ナノ粒子への高速重イオン照射という2つの課題を検討した。(1)に関しては、試料の調整法で少々手間取ったが、膜厚の異なる試料のデータがほぼ同じ曲線上に並ぶという美しい結果が得られ、ほぼ完了したと考えている。(2)の方は苦戦しているが、計画立案時から簡単にできる課題でないことは覚悟してきており、当初から27年度も28年度も改良を続けていく計画になっている。よって、ほぼ想定内の状況にあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は当初の計画通り、以下の2つの研究課題を実施する。 (1) 規則配列した単分散ナノ粒子への高速重イオン照射: 26年度に引き続き、透過電子顕微鏡試料作製法の改善を加え、なんとかEBL法で作製したナノ粒子の透過電子顕微鏡観察に成功することを目指す。 また顕微直線二色性分光の測定にも改善を試みる。 (2) ロッド化効率の照射温度依存性: 照射時の温度が上がるとIH効果による変形が小さくなることが知られている。IH効果がナノ粒子のロッド化に強く関与しているかを見極めるために照射時の温度を変えてロッド化の効率を評価する。インドの高速重イオン照射施設IUACに照射時の温度を変えて測定できる装置があり、その装置を使っての測定をインド側に打診しており、比較的前向きな回答をもらっている。
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Causes of Carryover |
本研究では、やむを得ず老朽化した装置を使用している。そのため、故障して急に数十万円の修理代が必要になることも時々起こる。それを計算に入れて、予算計画を立てているが、たまたまこのところ、装置が故障していなかったために、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究期間はあと2年間残っており、その間ずっと装置が故障しない可能性は非常に低く、じきに故障し、装置修理代として使用することとなる。
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