2015 Fiscal Year Research-status Report
希釈窒化物半導体中の欠陥の挙動およびデバイスの信頼性向上に関する研究
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26390057
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
上田 修 金沢工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50418076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢口 裕之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50239737)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 希釈窒化物半導体 / 欠陥 / 光照射 / 劣化 / 点欠陥 / 転位 / 電子顕微鏡 / フォトルミネッセンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、本研究の目的および研究実施計画に沿って下記の3項目の研究を行った。 (1)GaInNAs結晶のMBE成長と光学特性評価:平成26年度は、GaAs基板上のGaInNAsのMBE成長実験は、装置が故障したために、遅れていた。今年度は、装置を修理したことにより、GaInNAs/GaAs成長が可能になった。また、GaInNAs/GaAs QWも作製した。発光ピーク波長は、1000 nmであった。 (2)GaInNAs/GaAs QW構造への光照射パワー密度の増強:平成26年度はDPSSレーザー(波長=532 nm)を光源とした光照射により、PL強度の低下、すなわち劣化が観察された。しかし、最大照射パワー密度は、4 MW/cm2にとどまっていたため、大幅なPL強度の低下は見られなかった。一方、今年度は、以下の照射系の改善により、波長532 nmに対する反射率の高いビームスプリッターに交換することで照射パワー密度の向上を図った。その結果、最大照射パワー密度を6.3 MW/cm2まで上げることができた。 (3)照射パワー密度の増強によるGaInNAs/GaAs QWの劣化への効果:照射パワー密度を大幅に増強できた結果、以下の成果が得られた。a)同一サンプルでレーザー照射効果を調べた結果、PL発光強度の減衰時間は3.1 MW/cm2の場合に47秒であったものが6.3 MW/cm2では8秒と大幅に短縮された。b)GaInNAs/GaAs QWの場合、レーザー照射によって最初は急激に発光強度が増加し(照射前の50-70倍)、その後で発光強度が徐々に減少していくことを明らかにした。また最も発光強度が強くなった時を基準にすると60%程度の強度に減少することが判明した。 以上のように、照射パワー密度の大幅な増強により、GaInNAs結晶の劣化も大幅に進行させることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、GaAs基板上のGaInNAs/GaAs QW構造のMBE成長による作製を行えるようになった。また、当初予定していたQW層へのドーピング実験および結晶評価は今年度集中的に行う。さらに、光照射による劣化評価も合わせて行うことで計画通り進めていく。 以上全体としては、概ね順調に推移しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26,27年度の研究進捗に照らし合わせて、今年度は、以下のような推進方策を講じるとともに、3年間の研究を纏めることとする。 (1)GaInNAs/GaAs QW中の欠陥の形成・増殖に関する不純物ドーピングの影響について調べる。具体的には、QWへのドーピングによる光学特性評価および構造欠陥のTEMによる評価などを行う。 (2)GaInNAs/GaAs QW構造に対して、照射パワー密度をこれまでの低い条件から大幅に上げた条件にすることにより、劣化を大幅に促進させることができる。このような試料の劣化部に発生していると思われる欠陥構造をTEMにより明らかにする。また、QWへのドーピングが劣化に与える影響についても明らかにする。 (3)(1)および(2)の結果に基づいて、まず、欠陥低減のための結晶成長条件および熱処理条件などを提案する。また、欠陥増殖による劣化を抑制するためのデバイス構造設計の最適化についても提案する。
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Causes of Carryover |
今年度は、光照射試料で大幅に劣化したサンプルが少なかった。そのため、予定していた電子顕微鏡(金沢工業大学の附置研究所に設置)による、劣化部の観察の頻度が少なくなった。そのため、旅費の使用がやや減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、光照射パワー増強による、劣化サンプルが多く得られるため、前年度より電子顕微鏡による評価の頻度が多くなるため、本差額をこの旅費に充当させる予定である。
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Research Products
(10 results)