2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26390062
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤本 義隆 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 元素戦略プロジェクト研究員 (70436244)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グラフェン / ドーピング / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素の単原子層から構成されるグラフェンは、高いキャリア移動度など様々な特異な電子物性を有することから、次世代の電子デバイス材料候補として注目されている。一方、二層グラフェンにおいては、層間の相互作用により、単層グラフェンとは異なった新たな物性の出現の可能性が期待されている。本年度では、密度汎関数理論に基づいた第一原理電子構造計算手法を用いて、不純物を二層グラフェンへドープした場合でのエネルギー的安定性や電子特性を調べた。ホウ素をドープした場合には、エネルギー的安定性が置換サイトにほとんど依存していないことが分かった。一方、窒素ドープに関しては、安定性が置換サイトに依存する。すなわち、ドープされた窒素原子が、ドープされていないグラフェン層の炭素原子上で置換されるよりも、六員環の中心上で置換される方が、エネルギー的に低いことが分かった。さらに、ホウ素原子・窒素原子ともに、単層グラフェンへドープするよりも、二層グラフェンへドープした方が、エネルギー的利得が大きいことも分かった。電子特性に関しては、ホウ素をドープした場合、p型キャリア(正孔)が誘発され、窒素ドープでは、n型(電子)キャリアが誘発される。これらのキャリアは、ドープされたグラフェン層のみならず、ドープされていない層にも誘発されることが分かった。また、ホウ素がドープされると、ドープされる前と比較して、仕事関数が増加する。一方、窒素がドープされた場合では、仕事関数が減少することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、二層系グラフェンへの不純物ドープでの安定性と電子構造を調べた。その結果、ドーピングのサイトの安定性や電気的キャリアは、ドーパントの種類によって異なることを明らかにした。このように、二層系グラフェンにおいても、ドーピングによって機能化されることを明らかにした。そのため、概ね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においても、グラフェン内の不純物や欠陥を導入し、それらの安定性や電子特性を調べ、グラフェンの機能性材料としての可能性を探索する。特に、多層系シートの層間の相互作用に着目して研究を推進する。
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Causes of Carryover |
会議の参加費や論文の投稿料の免除により、当初の予定より成果報告に関する支出を抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を速やかに遂行するために、計算機システムの利用額を増加するとともに、論文投稿や学会・国際会議等の発表などの成果報告のために割り当てる。
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Research Products
(14 results)