2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26390062
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤本 義隆 東京工業大学, 理学院, 研究員 (70436244)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カーボン系ナノ物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素原子から構成される単原子層であるグラフェンは、電荷の移動度が極めて高いことから、次世代の電子デバイスの基盤材料候補として注目されている。前年度においては、二層グラフェンへのドーピングに関する研究を展開した。本年度では、前年度において研究を行ったドープされた二層グラフェンへの二酸化窒素など環境汚染ガス吸着による影響に関する研究を行った。その結果、ホウ素ドープ型二層グラフェンに関して、一酸化炭素や二酸化炭素分子は、比較的弱くではあるが吸着し、吸着後の分子とグラフェン層との距離は長い。一方、一酸化窒素や二酸化窒素分子は比較的強い吸着性を示し、また、吸着分子とグラフェン間の距離が比較的短いことが分かった。そのため、一酸化窒素や二酸化窒素分子が、ホウ素ドープされた二層グラフェンに吸着すると、電荷の移動が起こる。さらに、吸着する分子の種類によって、電荷の移動に違いが見られることも明らかになった。すなわち、一酸化窒素分子の吸着では、一酸化窒素分子からグラフェン層へと電子が移動するが、一方、二酸化窒素分子の吸着では、グラフェン層から二酸化窒素分子へと電子が移動することが分かった。また、電荷の移動する方向に依存して、仕事関数が変化することが明らかになった。すなわち、一酸化窒素分子が吸着した場合では、仕事関数が減少するが、二酸化窒素分子が吸着すると、仕事関数が増加する。このため、ホウ素ドープされた二層グラフェンは、一酸化窒素及び二酸化窒素分子を検知するために有用な材料であることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、グラフェンに不純物などの欠陥を導入することにより、電子デバイスへと応用できる機能性材料の探索を行っている。本年度では、二層系グラフェンへの環境汚染型ガス吸着に関する吸着エネルギーや電子構造を調べた。その結果、ドープされたグラフェンが機能化され、環境汚染ガスが検知できる可能性があることを見出した。そのため、順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、グラフェン中の欠陥構造や反応性、電子構造に関する研究をさらに推し進め、グラフェンのデバイス応用への可能性を調べる。特に、単層系と多層系との物性の類似点や相違点を明らかにする。
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Causes of Carryover |
会議への招聘による参加費等の免除により、本年度に予定していた成果報告に関する支出を抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を速やかに遂行するため、計算機の利用に割り当てる。また、得られた研究成果を公表するためにも割り当てる。
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Research Products
(16 results)