2015 Fiscal Year Research-status Report
三次元網目状ジルコニウム多孔体を用いた非蒸発ゲッターポンプの開発
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26390070
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
菊地 貴司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 技師 (30592927)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 真空 / 真空排気 / 非蒸発ゲッターポンプ / 排気速度測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
非蒸発ゲッター(NEG)ポンプは、エネルギー消費が極めて少ない、10-10 Pa台まで排気できる、振動・騒音を生じない、小型軽量である、油をまったく使用しないといった利点を持つ優れた真空ポンプである。しかし、研究例が少なく国産品がほとんどないため、普及が進んでいない。本研究の当初の目的は、三次元網目構造を持つ高純度ジルコニウム多孔体を用いた新しいNEGポンプの開発であった。しかしながら、高純度ジルコニウム薄板を用いて試作したNEGポンプが排気作用を示さなかったこと、高純度ジルコニウムよりもZr(70.0%)-V(24.6%)-Fe(5.4%)合金(ST707合金)などのNEG材料の方が高い排気速度を持つことから、目標を高めて三次元網目構造を持つST707合金などのNEG材料を用いた新しいNEGポンプの開発を進めることにした。平成27年度は、φ24×φ3×t1の三次元網目構造を持つニッケル多孔体にST707合金をスパッターにより製膜したNEG材料を開発した。しかしながらこのNEG材料を用いて製作したNEGポンプの排気速度をオリフィス法により測定したところ、水素ガス(H2)に対して3 L/s以下の排気速度しか得られなかった。そこで、市販のST707合金NEGピル60個をヒーター周りに放射状に配列したNEGポンプを開発した。本ST707合金ピル積層型NEGポンプの排気速度を室温にて測定した結果、H2、窒素ガス(N2)、一酸化炭素ガス(CO)、二酸化炭素ガス(CO2)に対する排気速度として、それぞれ130-110 L/s、35-15 L/s、170-120 L/s、200-80 L/sが得られた。この結果は既存のNEGポンプと比べても十分競争力のある性能である。本成果で特許(特願2015-233674「非蒸発型ゲッターポンプ」)を出願し、2016年の放射光学会年会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由:本研究の当初の目的は、三次元網目構造を持つ高純度ジルコニウム多孔体を用いた新しいNEGポンプの開発であった。しかしながら、高純度ジルコニウム薄板を用いて試作したNEGポンプが排気作用を示さなかったこと、高純度ジルコニウムよりもZr(70.0%)-V(24.6%)-Fe(5.4%)合金(ST707合金)などのNEG材料の方が大きい排気速度を持つことから、当初の目標より高い水準を目指して、ST707合金などの三次元網目構造を持つNEG材料を用いた新しいNEGポンプの開発を行うことにした。具体的には、平成26-28年度に 1.三次元網目構造を持つ新しいNEG材料の開発 2.三次元網目構造を持つNEG材料を用いたNEGポンプの開発とその排気速度の測定 3.三次元網目構造を持つNEG材料を用いたNEGポンプと市販の油回転ポンプを組み合わせた新しい省エネルギーハイブリッド粗引き真空ポンプの開発を行なうことを計画している。 平成27年度はST707合金ターゲットを真空アーク融解炉で作製し、φ24×φ3×t1の三次元網目構造を持つニッケル多孔体にST707合金をスパッター成膜して新しいNEG材料を製作した。また、市販のST707合金NEGピル60個をヒーター周りに放射状に配列したNEGポンプを開発し、H2、N2、CO、CO2に対する排気速度を測定して130-110 L/s、35-15 L/s、170-120L/s、200-80L/sの排気速度を得た。この結果は既存のNEGポンプと比べても十分競争力のある性能である。以上の成果から三次元網目構造を持つ新しいNEG材料を開発できれば目標とするNEGポンプを開発できる見通しが立った。平成28年度までに研究目的を達成する見通しが立ったことから、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では当初の目標より高い水準を目指して、三次元網目構造を持つ新しいNEG材料を用いた新しいNEGポンプの開発を行うことにした。平成28年度は、三次元網目構造を持つニッケル多孔体を超高真空下で加熱脱ガスしたのち、チタンを昇華法で厚さ1μm程度に成膜して新しい大排気量を持つNEG材料を製作する。さらに本NEG材料を用いて新しいICF70NEGポンプを製作して排気速度を測定する。成果が得られたら論文にまとめ、専門誌に投稿するとともに、NEGポンプの製造販売に関心を持つ真空機器メーカーと協力して市販を目指す。さらに三次元網目構造を持つ新しいNEG材料を用いたNEGポンプと市販の油回転ポンプを組み合わせた新しい省エネルギーハイブリッド粗引き真空ポンプの開発を行い、論文にまとめ、専門誌に投稿する。さらに真空機器メーカーと協力して装置の市販を目指す。 学会発表 (1)「非蒸発ゲッタポンプ用合金膜のスパッタ製膜」、三嶋東・早坂直之・大家渓・中野武雄・菊地貴司・間瀬一彦、表面技術協会第133回講演大会、東京都新宿区、2016年3月22日(ポスター発表)。(2)「高性能ピル積層型NEGポンプの開発と排気速度測定」、○菊地貴司・田中正人・小玉開・間瀬一彦、第29回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム、千葉県柏市、2016年1月10日(口頭発表)。(3)「NEG ピルを用いた低コスト高性能NEG ポンプの開発」、○菊地貴司・間瀬一彦・田中正人・小玉開、2015年真空・表面科学合同講演会、茨城県つくば市、2015年12月3日(口頭発表)。 特許 (1) 間瀬一彦、菊地貴司 「非蒸発型ゲッターポンプ」(出願番号:特願2015-233674、出願日2015年11月30日)
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Causes of Carryover |
平成27年度は当造初、蒸着装置部品購入費を計上していたが、成蹊大学中野研究室のスパッター装置を使わせてもらったことにより使用金額を削減でき、次年度使用額477,231円が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この予算は次年度に三次元網目構を持つニッケル多孔体に昇華法で清浄チタン薄膜を成膜して新しいNEG材料を製作するための消耗品購入に使用する。
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