2015 Fiscal Year Research-status Report
強レーザー場中の多電子ダイナミクス:時間依存・多配置波動関数理論の開発
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26390076
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 健 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30507091)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アト秒科学 / 高強度場現象 / 時間依存波動函数理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度レーザーと物質の相互作用を理解することは、物質中の電子の運動を直接観測・制御するアト秒科学において中心的な課題である。強レーザー場中の電子ダイナミクスの第一原理計算のために、時間依存多配置ハートリー・フォック(MCTDHF)法が提案されている。従来のMCTDHF法は、計算コストが電子数に対して指数関数的に増えるために多電子系への適用は困難だった。私達は先行研究において、物理的に不活性なコア電子は平均場近似し、ダイナミクスで主役を演じるアクティブ電子を正確に記述する時間依存CASSCF(TD-CASSCF)法を開発した。 TD-CASSCF法は従来のMCTDHF法より高速だが、全電子を正確に扱うのは困難である。例えば内殻電離過程に於いてはコア電子でも平均場近似は妥当でない。そこで前年度研究でTD-CASSCF法を拡張し、より柔軟で系統的な行列式展開に基づく時間依存ORMAS(TD-ORMAS)法を開発し、多電子ダイナミクスのよりコンパクトな記述を実現した。これにより、多電子分子の高次高調波発生、多重電離や多チャンネル電離、内殻電離やオージェ過程の計算を可能にした。 さらに当該年度研究では、三次元多電子原子ハミルトニアンに対するTD-CASSCF法の実装を完了した。具体的には、動径方向:有限要素-離散値表現(FEDVR)基底と角度方向:球面調和関数基底の直積基底によって軌道関数を展開し、最も計算負荷の高い電子-電子相互作用計算のために高効率のPoisson方程式ソルバを実装した。さらに凍結コア近似を採用した場合の正しい「力の定理」を導出し、原子番号の大きな元素の第一原理ダイナミクス計算も日常的に行えるようにした。次年度、開発したコードをTD-ORMAS法に一般化し、大規模並列計算環境を整備して本格的な応用計算に取り掛かる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初計画の通りに進捗しているが、一部当初計画を超える発展もある。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度までに完成させたTD-CASSCF法計算コードを拡張し、TD-ORMAS法を実装する。具体的には、(1) 実空間と角運動量空間との間の変換を廃した全解析的なコードの開発、(2) MPI/Open-MPハイブリッド並列化、(3) 高次のExponential integratorの開発と実装、(4) Exterior comples scaling法による電離電子の記述、の各項目を並行して行っていく。応用計算として希ガス原子(He-Kr)の高次高調波スペクトルにおける電子相関効果の解析、Be原子における非逐次二重電離の第一原理計算、Ne原子におけるアト秒ストリーキング実験の第一原理シミュレーション、Kr原子におけるアト秒transient分極実験の解析、を並行して行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は本課題達成に向けた基礎理論とコンピュータプログラムを完成させた。 本格的な応用計算を次年度に行うため、並列計算システム購入を次年度に回した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度までに完成させた高強度レーザー場中原子の多電子ダイナミクスコードtd1cを用いて応用計算を行う。 このために並列計算機システムを購入する。また海外出張旅費及び国内学会参加費にも支出する予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] 佐藤健2015
Author(s)
多電子ダイナミクスのための 時間依存多電子理論
Organizer
第2回電子状態理論シンポジウム
Place of Presentation
早稲田大学西早稲田キャンパス、東京都新宿区
Year and Date
2015-11-07 – 2015-11-07
Invited
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