2015 Fiscal Year Research-status Report
回折光学素子を用いたサブ回折限界光パターン生成と顕微秘密分散法への応用
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26390084
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小倉 裕介 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (20346191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生源寺 類 静岡大学, 工学部, 准教授 (90432195)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 回折光学素子 / 回折限界 / 暗号化 / 情報光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、回折光学素子を用いて単一の回折限界光スポットよりも細かい複数のスポット(サブ回折限界スポット)を持つ光パターン生成手法を開発し、顕微鏡下での画像情報暗号化システムに応用してその能力を実証することを目的とする。今年度は多次元スポットアレイ生成への拡張と,画像情報暗号化の基本原理実証を行い、主に以下の成果が得られた。 1.多次元サブ回折限界スポット生成素子の開発 昨年度に構築したアルゴリズムを多次元(波長多重・三次元)素子設計に拡張した。特に、反復ごとに、各波長の位相分布を統合する処理とクロストーク抑制条件を導入することにより、波長数が増えても高い性能を維持できることを見いだした。また、2波長2出力面の素子を用いた実験により,目的の光パターンが得られることを確認した。 2.素子の特性解析 本素子で生成される光パターンの特性を調査した。例えば、光軸方向のスポット径の変化は回折限界スポットよりも極めて小さく、深い焦点深度が達成できることを明らかにした。小さいスポットと深い焦点深度の両立は種々の応用において有用であると考えられる。 3.画像情報暗号化の原理実証 回折限界付近での光の振る舞いを利用したセキュリティ技術として、視覚復号型暗号化手法を検討した。本手法では、サブ回折限界スポットアレイを鍵、反射率分布を暗号化情報として用いる。光学実験により、通常の一様照明では原画像が得られないのに対して、鍵パターンを照射した場合には原画像が正しく復号されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多次元回折光学素子の設計においては、アルゴリズムの正当性を示すだけでなく、パラメータと性能との関係を明らかにし、パラメータ設定の指針も得られた。素子の解析により有用な特性も見いだされた。光学実験においても、シミュレーションとほぼ一致した結果が得られており、大きな問題は生じていない。画像暗号化については、網羅的評価を実施するために、画像サイズを当初想定よりも小さく設定したが、予定通り基本原理を確認することができた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ研究推進に関わる問題は生じておらず、当初の計画どおり研究を進めていく予定である。まずは、これまでより高い開口数の集光レンズを用いてシステムを構築し、顕微スケールのパターン生成を検証する。一方、前年度に検討した画像暗号化手法をステガノグラフィに応用し、サブ回折スケールの光物理に基づくセキュリティ技術の能力を示す。このとき、波長ごとに鍵パターンを対応付ける秘密分散法への拡張についても検討する。これらの成果を国内外の学会で発表し、学術論文発表としてまとめる。
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Causes of Carryover |
本年度の実験において、暗号化画像(反射率分布基板)をガラス基板上にリソグラフィで作製する予定であったが、手持ちの可変のDMDデバイスで代用するなど、経費を抑制したため、少額の繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金は次年度のシステム改良に回す予定である。次年度予算は、システムの光学部品および電子部品、研究成果発表および打ち合わせ旅費、論文投稿などに使用する。
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