2014 Fiscal Year Research-status Report
正弦電圧ゲート動作型シリコン雪崩フォトダイオードによる光検出に関する研究
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26390087
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
行方 直人 日本大学, 理工学部, 助教 (20453912)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 単一光子検出器 / シリコンなだれフォトダイオード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シリコン(Si)なだれフォトダイオード(APD)を用いた光検出器の超高性能化を達成することを目標としている。26年度においては、Siの単一光子検出用APD(Si-SPAD)を高振幅交流電圧信号によってゲート動作させることによって超高効率単一光子検出が可能かどうかを調べた。 研究開始時においては、これまで実績からゲート動作手法へは「正弦電圧ゲート」動作を採用し、そのゲート電圧振幅を高めることによって高効率化の実現を図った。しかし、試験に用いたSi-SPADの応答速度が3 ns以上と想定よりやや遅く、ゲート幅は通常サブナノ秒となってしまう正弦電圧ゲート動作を使用することは困難であることが判明した。そこで、任意のゲート幅が得やすい「矩形電圧ゲート」手法を用い、先行研究では10V程度までしか実現していなかった矩形ゲート電圧振幅を40V程度まで高めることに挑戦した。自作回路によってパルス幅4ns、電圧振幅 > 37V、繰り返し周波数500 kHzを実現した。その矩形パルス電圧を用いて波長780nmにおける量子効率85.6%を有するSi-SPADをゲート動作させ、単一光子検出性能を評価した。その結果、正味の単一光子検出効率85.2%、ゲートあたりの暗計数確率7×10-6を達成した。得られた光子検出効率は量子効率とほぼ等しく、光子吸収によって生成されたキャリアがほぼ完全な効率で検出可能ななだれ信号へ成長し、かつそれを検出できたことを意味する。また、85%を超える単一光子検出効率は、研究代表者が知る限り、現在のところ世界最高である(半導体を用いた光子検出器に限る)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規購入したSi-SPAD素子自体の光応答性能により、当初予定していた「正弦電圧ゲート動作」手法ではなく「矩形ゲート動作」手法を用いるという計画変更があった。しかし、それによって得られた結果は当初の数値目標を90%以上達成できたといえる。残念ながら、購入したSi-SPADの量子効率自体が予想スペックを満たしていなかったため、当初の目標である単一光子検出効率90%以上の実現は未達である。しかし、この点はSPAD素子を交換するほかないため、次年度における課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
調書の研究計画通り、時間相関光子対による光子検出効率のより精密な測定を行う。これにより26年度に得られた単一光子検出効率85%が確かであるかを精査する。 また、単一光子検出効率90%以上の実現に向けた取り組みも継続する。例えば、26年度に試験したものと同じSi-SPADを使用するものの、他の波長(780 nm以外)における評価を行う(量子効率等は波長に強く依存する)。さらには、他の素子も使用する。量子効率自体は波長650nmにおいて95%を有する素子をすでに手に入れている。しかし、単一光子検出用APDではないため、その点がどのような悪影響を及ぼすかも含めて研究開発を進める。 27年度においては、当初の計画通り、Si-APDを用いたホモダイン検波器の研究開発にも着手する。
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Causes of Carryover |
【研究実績の概要】で述べたように、研究計画の変更により高周波部品等において購入物品の変更があったため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年7月に開催されるSingle-Photon Generation and Detection Workshopに招待されている(招待講演)。よって、当初予定していたよりも予算を旅費へさく必要がある。よって、前年度予算の差額分はその旅費へと充てる予定である。
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