2014 Fiscal Year Research-status Report
共鳴レーリー散乱抑制と光捕集効果を持った光アンテナとその中赤外光検出素子への応用
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26390089
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笠原 健一 立命館大学, 理工学部, 教授 (70367994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 共鳴レーリー散乱 / 光アンテナ / 中赤外 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の目標は共鳴レーリー散乱(RSS)を抑制し、光捕集効率を高めるための光アンテナ構造の設計と実験的検証であった。そこで、1) 光アンテナと光アンテナのピッチを変化させる方法と、2) ファノ効果を使ってアンテナ1素子内でこれを実現する方法について調べた。前者はアンテナ素子間の干渉効果により反射率を抑制し、後者は1個のアンテナ内でのファノ効果を使って反射率を抑制しようとするものである。 1)ではダンベル型スロットアンテナ(DSA)を作製し、ピッチを変化させた。DSAではスロットの中央部を狭めており、その部分で電界が増強される。干渉効果が増強して反射率が下がるのは実効的なピッチが波長の整数倍の時であり、実験的にもそれが確認できた。 2)のファノ効果を実現するために、先ずはドルメン型光アンテナ構造を検討した。ドルメン型光アンテナでは3個の矩形状のAuが基板上に近接して配置されており、1つの縦長のモノマーと2つの横長のダイマーを配置した構成となっている。光照射によってこれらの金属内には双極子と四重極子に対応した電荷分布ができる。双極子は光と相互作用するのでブライト・モードであり、四重極子はまたダーク・モードとなる。一般的に双極子共鳴によるスペクトルは広く、また四重極子共鳴によるスペクトルは狭くなる。このような場合、共鳴スペクトルは単純な足し合わせにならず、干渉効果(ファノ効果)が発生する。ドルメン型光アンテナではモノマーとダイマーの大きさや間隔を適切に設計すれば反射率をゼロ近くにまで低減させて光吸収効率が高めることができるはずである。実際、反射率は1)よりも低い30%の値を実現できることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の1つは光アンテナで局所場増大に伴う物質系での共鳴レーリー散乱の増大を抑制し、高い光捕集効果を持ったアンテナ構造を解析・実験の両面から体系的に研究することにある。ファノ効果を使えば干渉効果で光散乱を人為的に低減できる可能性がある。しかしながら検出素子への応用では受光効率を高めねばならず、光捕集とRSSという両方を意識した光アンテナの研究はこれまでなかった。 この目的に対しては、研究は概ね順調に推移している。本年度に行ったドルメン配置ではファノ効果を実現できるが、光捕集効率を更にあげるための構造上の改善は今後、必要となる。ホット・スポットを中心部の狭い領域のみに作り出す事が可能な変形スロット・アンテナを非対称形状にすることを考えているが、FDTDによる消衰係数やファノ効果の広帯域化等の解析は若干、遅れている。FDTD計算には金属を含む解析で信頼性の高いソフトを導入し、計算機の高性能化を図ったが、波長に比べて小さな構造体を扱うためにノウハウの蓄積が必要だったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
光アンテナ構造の最適化と中赤外光検出素子作製に向けた予備試作を行う。2014年度はAl2O3/SiO2/Si素子で光捕集効果を調べたが、Si基板を用いたのは化合物半導体上に光アンテナを作る場合に比べて素子の製作が簡単であるためである。2015年度は、実際に近い材料構造を用いて研究を進めるが、ファノ効果によるRSS抑制効果が検証され、光捕集効果が確認できればそれだけでも意味は大きい。 光アンテナ搭載光検出器では前半にMBEの条件出しを行い、後半に一次試作を行う。基本構造はAlGaAsで挟まれた単一のn-GaAs量子井戸層(2x1018cm-3)から成る。量子井戸内に出来る量子準位は一つとなるようにし、中赤外光照射によって励起された電子はn-AlGaAs障壁を乗り越えられるようにする。そのためにはGaAs層厚は~5nm、障壁層はAl0.31Ga0.69As(障壁高さ250meV)にする。GaAs層の位置は光アンテナ直下の~10nmに形成し、電界増強度が100~1000倍となるようにすれば、等価的に0.5um~5umの厚さを得たことになる。サブバンド間遷移であるので量子井戸内でTMモード成分が必要となるが、アンテナによってTEで入射した光に対してもアンテナ直下にはTM成分が生ずるので支障はないし、FDTD解析でも確かめている。一次構造では電極無しの構造で顕微FT-IRによる反射、透過スペクトルから特性を評価する。
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Causes of Carryover |
金属を含めた系に対して信頼性の高い解が得られるFDTD解析ソフト(ルメリカル社製)を購入した。本ソフトは、当初の計画で購入予定していた会社のものとは違い、信頼性も高い上に安価で購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は半導体基板にアンテナを搭載する計画であるがその材料費等に充当する。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] 中赤外光スロットアンテナによる光増強効果の垂直方向依存性(Ⅱ)2015
Author(s)
國近祐太, 川野貴裕, 宮田純一, 山本悠人, 西村悠希, 笠原健一, 家路豊成, 池田直樹, 大里啓考, 杉本喜正
Organizer
第62回応用物理学会春季学術講演会
Place of Presentation
東海大学, 平塚市, 神奈川県
Year and Date
2015-03-11
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[Presentation] 中赤外光アンテナの干渉効果による反射率低減2015
Author(s)
川野貴裕, 國近祐太, 西村悠希, 宮田純一, 山本悠人, 笠原健一, 家路豊成, 池田直樹, 大里啓孝, 杉本喜正
Organizer
第62回応用物理学会春季学術講演会
Place of Presentation
東海大学, 平塚市, 神奈川県
Year and Date
2015-03-11
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[Presentation] 中赤外光スロットアンテナによるレストストラーレン反射の観測2014
Author(s)
西村悠希, 川野貴裕, 國近祐太, 山本悠人, 宮田純一, 笠原健一, 家路豊成, 池田直樹, 杉本喜正
Organizer
平成26年度第75回応用物理学会秋季学術講演会
Place of Presentation
北海道大学, 札幌, 北海道
Year and Date
2014-09-17
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[Presentation] ドルメン構造光アンテナにおける反射スペクトルの検討2014
Author(s)
西村悠希, 川野貴裕, 國近祐太, 山本悠人, 宮田純一, 笠原健一, 家路豊成, 池田直樹, 杉本喜正
Organizer
平成26年度第75回応用物理学会秋季学術講演会
Place of Presentation
北海道大学, 札幌, 北海道
Year and Date
2014-09-17
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[Presentation] Reflection spectra of mid-infrared dumbbell-shaped slot antenna arrays with different inter-antenna distances2014
Author(s)
S. Mori, Y. Nishimura, T. Kawano, Y. Kunichika, K. Kasahara, T. Yaji, N. Ikeda, H. Oosato, and Y. Sugimoto
Organizer
13th international conference on near-field optics, nano-photonics, and related techniques (NFO13)
Place of Presentation
Salt Lake City, Utah, USA
Year and Date
2014-09-03
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