2015 Fiscal Year Research-status Report
原子間電子遷移過程の再構築に基づく超高効率・超高速放射線検出素子の開発
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26390101
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大西 彰正 山形大学, 理学部, 教授 (90261677)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射線センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究において、A2ZnCl4 (A:Rb,K)結晶におけるX線光電子分光測定および光反射スペクトル測定が何れの結晶もオージェ・フリー発光の発現条件を満足するとともに、浅い内殻準位がZnの3d軌道で構成されるという、従来のオージェ・フリー発光物質では見られなかった新規かつ重要な知見を示した。本年度は、これらの結果を受け、軌道放射光を用いた分光実験により新タイプのオージェ・フリー発光の存在を追跡した。また、新しい取組として、A2ZnF3 (A:Na,K,Rb)、α型およびβ型BaLu2F8結晶を作製し新規オージェ・フリー発光の探索を行った。内殻励起のできる真空紫外光を用いて光照射を行い発光の観測を行ったところ、4-7eVの領域に特徴的なスペクトル形状を持つ二本の発光帯が間作された。励起スペクトル測定から、これら発光帯が原子間 p-d 遷移によって生じる新規オージェ・フリー発光であることが明らかになった。また、光電子スペクトルとの比較から、オージェ・フリー発光のスペクトル形状が価電子帯の構造を反映していることが示唆された。現在、これら新規オージェ・フリー発光の発光寿命を明らかにするための実験準備を進めている。一方、A2ZnF3 (A:Na,K,Rb)において、X線光電子分光測定および光反射スペクトル測定から電子構造の解析を行い、バンドギャップエネルギーおよび浅い内殻準位トップと価電子帯トップとの間のエネルギー差を評価した。その結果、K2ZnF3結晶がオージェ・フリー発光の発現条件を満足するという重要な結果が得られた。しかし、まだオージェ・フリー発光の観測には至っていない。α-, β-BaLu2F8結晶においても同様の研究を進めた。何れの結晶においても5 eV付近にオージェ・フリー発光が生じることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画していた実験がほぼ予定通りに進行し、次年度の発光寿命測定が予定通りに開始できる段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に発見したオージェ・フリー発光に対して、特に発光寿命測定を主とした実験を行う。これまでの実験結果の解析を更に進めるとともに、寿命測定から得られる結果を総合して、新規オージェ・フリー発光の発現原理や内殻正孔の緩和過程等を追求する。
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