2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノ秒衝撃圧縮によるペンスリット単結晶爆薬の衝撃起爆機構の解明
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26390108
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
若林 邦彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (00371089)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 火薬学 / 衝撃起爆機構 / 起爆感度 / レーザー誘起衝撃波 / ナノ秒衝撃圧縮 / レーザー速度干渉計 / ラマン分光法 / ペンスリット |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は実験装置の改良や試料の作製条件の最適化等を先行して研究を実施した。 時間分解型ラマン分光装置の光学系の改良を行い、70 cm-1程度までの低波数領域のストークスラマン散乱光を測定することを可能とした。本装置を用いて常温大気圧下でペンスリット単結晶のラマンスペクトルを測定した結果、パルス幅6 ナノ秒、波長532 nmの励起光を用いた場合に単発照射によって格子振動に由来するピークを測定できることを実証した。本装置を用いてレーザー直接照射によってペンスリット単結晶を [110]方向に衝撃圧縮しラマン分光を行ったところ、衝撃波侵入から50 ns後においてニトロ基由来の分子振動ピーク(1293 cm-1)が9.7 cm-1程度シフトする様子が観測され、シフト量から求めた平均衝撃圧力は約2.9 GPaであった。このとき格子振動に由来するピークには強度の変化等が観測されており、実験手法の有効性が確認された。 衝撃圧縮状態の明確化においては、現有するレーザー衝撃圧縮実験装置に付随するレーザー速度干渉計システムの高度化を行った。二つの状態方程式パラメーターを同時独立測定するためにレーザー速度干渉計を点結像型から線結像型に改良し、試料の移動速度の一次元空間分布を測定することを可能とした。試料作製においては、結晶成長条件の最適化を行った結果、厚さ100マイクロメートル以下の薄板状のペンスリット単結晶を作製する条件を見出した。薄板状試料と線結像型レーザー速度干渉計を用いることで、ペンスリット単結晶の状態方程式を精密に測定できる見通しが得られた。また、衝撃波の伝播に伴うラマンスペクトルの変化を明らかにするために、レーザー速度干渉計による粒子速度測定とラマン分光測定が同時に行えるように光学系の改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体としては、ほぼ計画通りに進捗している。 実験については、装置の高度化作業が順調であったため予定より進んでおり、主たる部分については概ね完了した。状態方程式の精密測定とラマン分光実験についてはデータの蓄積を進めており、これについてはH27年度も引き続き実施する。 数値計算シミュレーションについては流体計算コードのプログラミング作業を進めており、概ね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
ラマンスペクトル測定データの蓄積と高精度化を進め、ラマンスペクトル変化の衝撃圧力依存性や振動モード依存性データの収集を進める。本研究を進める上で重要な要素技術の一つである衝撃圧縮の高圧力化についても検討を行う。状態方程式の精密測定を進めると共に、得られた状態方程式と粒子速度データを流体計算に組み込み、圧縮領域の圧力分布の推定手法を確立する。分子振動や格子振動温度を測定することによって、結晶構造やすべり面における熱エネルギーの集中などを検討するために、アンチストークスラマンの測定を可能とするように装置の改良を行う。ストークスラマンとアンチストークスラマンのピーク強度比や複数の分子振動ピークの相対強度比等を用いて、エネルギー分布や局在化、エネルギー移動等について計算科学的な手法も取り入れて検討を開始する。
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Causes of Carryover |
H26年度は論文を投稿しなかったため英文校閲費を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度に論文を投稿する予定である。この際に英文校閲を行うことで使用する予定である。
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Research Products
(1 results)