2015 Fiscal Year Research-status Report
固体アルゴンを用いた「水の窓」3nm帯連続発生軟X線源の研究
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26390113
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
天野 壮 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 助教 (50271200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 修治 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 教授 (90135757)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水の窓 / 軟X線 / レーザープラズマ / 固体アルゴン / 連続発生X線 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルゴンプラズマによる「水の窓」と呼ばれる3nm帯の連続発生軟X線源の光源特性を研究し、その応用を示して放射光光源に代わる実用的小型光源である事を実証する。初年度は、開発された固体アルゴン「水の窓」3nm帯軟X線源を連続運転して、100mW以上の平均出力発生に成功した。本年度もスペクトル特性やイオン特性を引き続き調べ、より詳細にその光源特性を明らかにした。その結果、レーザー強度5×1012W/cm2の時、最大変換効率は14%と向上した。本年度はさらに、この発生X線を効率良く集光して応用実験に用いるための軟X線集光ミラーシステムを開発した。先ず、3nm帯X線ミラーの検討を行った。当初、斜入射金属ミラーを想定し、Ru、Au、Pt、Ni、Crミラーについて比較して「水の窓」X線領域ではNiミラーが最も高反射率で適している事を示した。しかし実際にNiコートのエリプソイダルミラーの設計を行ったところ、小さい入射角度のため現実的に制約が多いことが判明した。そのため入射角度が大きく反射率の高い多層膜ミラーについて検討し直し、結局NiCr/V2O5多層膜エリプソイダルミラーを用いる事とした。このミラーの焦点距離に合わせた集光ミラー真空チャンバー及び加工真空チャンバーを設計製作し、3nm帯軟X線集光加工システムを完成させた。ところで、本研究で用いる新ターゲット供給装置は冷却にクライオスタットを採用しており、これが振動を発する。この振動が集光ミラーに伝搬して集光X線スポットがぶれる恐れがあったため、この振動特性を評価した。光源真空チャンバー上に加速度ピックアップセンサを置き振動を測定した。その結果、何も対策をしないとクライオスタット特有の2.4 Hz周期の振動が伝搬しその変位は3μm程度あったが、防振材の使用により振動変位はμm以下とほとんど抑制できる事が分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで培われたレーザープラズマX線に関する知見・物品が有効に生かされ、予期せぬトラブルも起こらなかったため計画通りに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に完成させた3nm帯軟X線集光加工システムを用いて応用実験を行う。そのため先ず、導入した集光ミラー系の特性評価を行う。即ち、ミラー焦点にエネルギー検出器を置き絶対エネルギー値を測定、さらにこれをピンホールスキャンして集光スポット径を測定する。これらより絶対集光強度及び集光効率を求める。さらに、その集光強度の時間安定度をモニターして振動の影響が無い事を確認する。次に、その焦点位置にPMMA、或は他の有機材料サンプルと金属メッシュによるコンタクトマスクをおいて、集光X線による微細加工を行う。以上の応用実験を通して、本「水の窓」3nm帯連続発生軟X線源が実用的小型光源である事を実証する。
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Causes of Carryover |
X線ミラーを新規に作成購入する予定であったが、検討の結果、既存品が使える事が判明してこの分が浮いた。一方、予定していた中古真空ポンプが故障により使えなくなったので新たに真空ポンプを購入した。その結果、これらの差額分が未使用分として繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
集光ミラーおよびサンプルホルダーは真空チャンバーの中にあるので、これらのリモート微調機構に充当する。またPMMA以外、当初計画にはなかった加工サンプル材料の購入費に充て加工応用例を増やす。
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