2015 Fiscal Year Research-status Report
Ｊ－ＰＡＲＣとＪＲＲ－３の相補利用による高圧機能物性研究の展開
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26390116
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| Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
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Principal Investigator |
長壁 豊隆 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (80354900)
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| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | 高圧力 / 単結晶中性子回折 / J-PARC / JRR-3 / 相補利用 / 機能物性研究 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、J-PARCのパルス中性子源に設置された特殊環境微小単結晶中性子構造解析装置SENJU(BL18)において、ピストンシリンダ型圧力発生装置の限界である3GPa以上、及び1K程度までの低温下で単結晶中性子回折実験を可能にする技術を開発する。これにより、J-PARCのパルス中性子源とJRR-3の定常中性子源の中性子強度特性や測定原理の違いを相補的に活用し、高圧力が誘起する機能物性の探索、解明を目指す。
平成27年度は、前年度に開発したSENJU用対向ハイブリッドアンビル(HA)式小型高圧力セルを用いたテスト測定を行った。これまでに、アンビルキュレット直径3.5mm、初期厚0.45mmのJIS2017のAl合金ガスケット、グリセリン圧力媒体という条件で、オフベンチで3GPaの圧力発生に成功しているが、実際に、テスト試料として少数キャリアー強相関電子系物質CeSbを上記高圧セルにセットし、磁気反射観測の可否を確認する目的で、最低2.5K、圧力2GPaという条件で測定を行った。その結果、S/N比改善のためにBN製トランペット型コリメータが必須となることなど新たな課題が見つかったものの、I型及びIA型の反強磁性磁気構造に由来する磁気反射を明瞭に観測することに成功した。この結果は、MLFにおいて低温高圧力下で磁気反射を観測した初めての例となった。しかしながら、J-PARC MLFの水銀ターゲットのトラブルで平成27年度はほぼ運転停止となり、これに続くテスト測定を計画していたが実施できず、これ以上の進展がなかった。J-PARCでの研究と並行して、同じパルス中性子源ISIS(英)において、上記のハイブリッドアンビル高圧力セルを用いたマルチフェロイック物質TbMnO3について研究を行い、5GPaまでの回折実験に成功した。その結果、この物質のMnスピンの圧力誘起Eタイプ秩序が、交換磁気歪み機構を通した巨大強誘電分極をもたらしていることを明らかにした。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のとおり、SENJUにおいて3GPa以上で単結晶中性子回折実験を実現するための高圧力発生技術の開発の目処がつき、また、実際に、最低2.5K、圧力2GPaという条件でCeSbのテスト測定を行い、低温高圧力下の磁気反射測定に成功した。しかしながら、J-PARC MLFの長期運転停止のため、アンビル条件を変更したシグナル強度の確認や、高S/N比のシグナルを得るためのノウハウの蓄積など、予定していたビーム実験が実施できなかった。
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| Strategy for Future Research Activity |
技術開発を継続して行い、SENJUにおいて低温、3万気圧以上の圧力下で中性子磁気回折実験を実現するための技術の確立を目指す。平成28年度は、まず、試料以外のアンビル部分に入射する中性子ビームを可能な限り低減するためのBN製トランペット型コリメータを製作し、この効果を確認する。テスト測定において十分なS/N比のシグナル強度が得られる段階となった場合、CeSbについて磁気反射強度の波数依存性の測定、正方晶層状化合物HoB2C2について未知の高圧相の磁気構造解明等を目指す。比較的シグナル強度が強いMn系マルチフェロイック物質RMn2O5(R:希土類元素,Y,Bi)についても、アンビルキュレット面を縮小してより高圧力下での測定を実施し、新規磁気秩序相の探索を目指す。
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| Causes of Carryover |
本研究では、J-PARCのパルス中性子源に設置された特殊環境微小単結晶中性子構造解析装置SENJU(BL18)において3GPa、及び1K程度までの低温下で単結晶中性子回折実験を可能にする技術を開発するが、その際、報告者がこれまでに開発を行ってきた定常炉JRR-3用のハイブリッドアンビル(HA)圧力発生技術を応用する。最も重要な開発項目は、加圧可能な試料体積をJRR-3に比べて増強することであり、そのためには、キュレット直径サイズの異なる複数のHAについて加圧試験(破壊試験)を繰り返し行い、知見を得る必要がある。前年度、キュレット直径3.5mmφのHAを用いることで初期目標であった3万気圧の圧力発生を達成した。また、J-PARC MLFがほぼ１年間運転停止したためビーム実験が実施できず、複数のサイズのアンビルに試料をセットしてシグナル強度を確認するためのテスト測定ができなかった。これらの理由から、当初予定していた数種類のアンビルの購入を見送った。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
3GPaの圧力発生を達成したが、より高圧力、あるいは、より大きい試料を加圧するための条件探索のため、複数のアンビルを購入し、加圧試験を行う。また、加圧試験に必要なガスケット等の消耗品を購入する。SENJU実験におけるバックグラウンドを低減させるためのBN製コリメータやスリットの製作を行う。
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