2015 Fiscal Year Research-status Report
レゾルベント型跡公式と関連する保型形式とゼータ関数の研究
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26400017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
権 寧魯 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (30302508)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 離散系列表現 / Siegel-Whittaker関数 / 合流型超幾何関数 / 部分的変形 / 保型形式の周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.階数2の実斜交群上の大きい離散系列表現に対するSiegel-Whittaker関数の明示的積分表示を得た。満たすべき偏微分方程式系や形式的級数表示は今までに知られていたが(T. Miyazaki, J. Math. Sci. Univ. Tokyo 2000) 、簡明な積分表示を持つ2変数の部分的に合流した超幾何関数いくつかの線形結合として具体的に書くことに成功した。このタイプの合流型超幾何関数は、階数2の他の群の場合でも現れることが期待される。また、線型結合の係数から構成される行列の行列式に著しい規則性が観察され、数論的にも表現論的にも重要であることが示唆される。以上は織田孝幸氏との共同研究の結果を含む。 2.セルバーグゼータ関数の対数微分の部分的変形について考察した。具体的には、極の位置を動かさずに、各極での留数が変化するような「セルバーグゼータ関数の対数微分」の部分的変形の族を考察した。このようなゼータ関数の部分的変形の族は、今まであまり考察されたことはないが、ゼータ関数の零点についての研究において重要であると考えられる。ある条件を満たす保型形式の周期から構成されるディリクレ級数について、全平面への有理型解析接続や極の位置、極での留数をすべて決定した。その結果、今回扱った「保型形式の周期から構成されるディリクレ級数」が「セルバーグゼータ関数の対数微分」の部分的変形の族の一例を与えていることが分かり、大変興味深いといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平滑な Siegel-Whittaker 関数の2変数の部分的に合流した超幾何関数としての積分表示とともに、レゾルベント型跡公式にとって重要である特異点を持ったSiegel-Whittaker 関数についても簡明な積分表示が得られたため、研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
階数2のジーゲルモジュラー多様体に対するレゾルベント型跡公式の差分とその応用について研究する。階数2のリー群 Sp(2,R)上の特異点をもった球関数や 一般化Whittaker 関数からポアンカレ級数(グリーン関数)を構成し、それを核とする積分作用素の「レゾルベント型跡公式」の定式化を行う。その際には、今回得られた平滑な Siegel-Whittaker 関数の2変数の部分的に合流した超幾何関数としての積分表示が役に立つと思われる。上記の「レゾルベント型跡公式」の定式化を特定のKタイプを固定した上で行い,それらの差分を研究する。得られた跡公式の細分化を用いて、一般化セルバーグ型ゼータ関数や数論的な応用を研究する。
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Research Products
(2 results)