2015 Fiscal Year Research-status Report
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26400023
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鍬田 政人 中央大学, 経済学部, 教授 (00343640)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 数論幾何学 / K3曲面 / 楕円曲面 / Mordell-Weil格子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、 K3曲面の中でもとくに Kummer曲面と関連した曲面上の楕円曲面の構造を分類し、そのMordell-Weil格子をできるだけ詳しく記述することである。平成27年度は種数2の曲線CのJacobi多様体J(C)の Kummer曲面Km(J(C))のn重被覆として得られるK3曲面について、その上に興味ある楕円曲面の構造を構成し、そのMordell-Weil群について明らかにすることを中心に研究を進めた。これは、平成26年度までに解決した、2つの楕円曲線の直積から得られるKummer曲面のn重被覆(n=1,...,6)として得られるK3楕円曲面のMordell-Weil群の生成元を求める問題を一般化する試みである。まず、直積型のKummer曲面のn重被覆の類似にあたる被覆の候補を、Abhinav Kumar氏の協力を得て2種類構成し、そのMordell-Weil格子を調べる基礎を築いた。また、その応用として、直積型のKummer曲面からは得られない階数15のMordell-Weil格子を持つ楕円曲面を複数の仕方で構成した。これらは論文としてまとめて発表する準備を進めている。 Picard数20であるK3楕円曲面のMordell-Weil群の生成元を求める問題については,平成26年度までにその主要部分を解決したが、平成27年8月にアメリカ・ブラウン大学で開かれたJoseph Silverman教授の還暦記念研究集会でこの結果を発表し、そこに集う研究者と討論して、有益なフィードバックを得た。また、昨年発表した論文では一部を除いて一般論しか扱っていなかったPicard数20のK3楕円曲面について、内海和樹氏と共同で、次数3の同種写像を持つ場合について個別の具体的な結果を得たので、これを学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の主な目標は、直積型のKummer曲面から構成されるK3楕円曲面のMordell-Weil格子についてこれまでに得られている結果を、種数2の曲線CのJacobi多様体J(C)の Kummer曲面をもとに構成されるK3楕円曲面の場合に拡張できるかを探ることにあった。これについてはAbhinav Kumar氏の協力を得て、直積型のKummer曲面のn重被覆の類似にあたる被覆が2種類存在することを発見し、それら楕円曲面のWeierstrass方程式を書き下し、Mordell-Weil格子の階数を決定した。この結果は平成27年度中に論文としてほぼまとめることが出来たので、当初の目標通り順調に進捗していると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に得られたJacobi多様体J(C)の Kummer曲面Km(J(C))のn重被覆として得られる2種類のK3楕円曲面の族について、そのMordell-Weil群の生成元を求めることを大目標とし、それに向かっての第一の課題としてMordell-Weil群の定義体についての詳しい考察を行いたい。直積型のKummer曲面の場合はレベルn構造を備えた楕円モジュラー曲面が決定的な役割を果たしたので、この場合もレベルn構造をもったJacobi多様体の普遍族が重要な役割を果たすと期待される。しかし、楕円モジュラー曲面とは違って、このようなJacobi多様体の族については,未だ知られていないことが多いので、まずはこのようなJacobi多様体の族について詳しく調べる必要がある。この問題については、すでにAbhinav Kumar氏とともにレベルが3と4の場合についての研究を開始しており、これを継続発展させていきたい。 また、これまでに得られたMordell-Weil格子の生成元に関する一般論を応用し、数論的に興味ある具体的な楕円曲面のMordell-Weil格子のより精緻な構造を調べることも、内海和樹氏らと協力し推進していきたい。このためには大規模な数式処理を行う必要が出てくるが、そのためにより数論の計算に適した数式処理プログラムについても必要に応じて導入することを検討している。
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Causes of Carryover |
申請時には Abinav Kumar氏を日本に招聘することを念頭に計画調書を作成し,旅費・謝金とを計上したが、Kumar氏が長期にわたって米国を離れることが困難となったため、旅費・謝金等に繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大規模数式処理のための高速コンピュータや、数論にてきした数式処理プログラムの導入に当初の計画以上の予算を充てたい。
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Research Products
(3 results)