2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400027
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
村瀬 篤 京都産業大学, 理学部, 教授 (40157772)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 保型形式 / 対称性 / affine Lie algebra / 完全再生可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
完全再生可能関数とよばれるローラン級数は、有限群論、特にムーンシャイン予想において極めて大きな役割を果たした。すなわち、Borcherdsはモンスター群に関するトンプソン級数が完全再生可能関数であることを示すことによって、それが種数0の保型関数体の生成元となることを示したのである。平成26年度の本研究では、完全再生可能関数がある種の積対称性で特徴づけられることを示した。より詳しくいうと、ローラン級数のある系列がヘッケ型の作用素に関して対称性をもつことと、それらの展開係数が完全再生可能性という条件を満たすことが同値であることを示した(Heim氏との共同研究)。今後の課題として、本研究の課題であるBorcherds積のみたす積対称性をより一般化するという問題がある。これによって、レベル付きの保型形式の場合にもBorcherds積を積対称性で特徴づけることができる可能性が生まれる。 平成27年度には、まずヤコビ形式の場合に、無限積展開をもつための条件と一般化された積対称性との関係を探ることを計画している。nontwisted affine Lie環の分母公式はあるベクトル系に付随する無限積として表されることが知られているが、twisted affine Lie環の場合の分母公式はひとつのベクトル系に付随する無限積としては表されず、いくつかのベクトル系に付随した無限積のtwistされた積になる。これが一般化された積対称性をもつことが示されれば、興味深い現象と思われる。 四元数ユニタリ群の場合のSaito-Kurokawa型リフトやBorcherds型リフトについては、予備的考察を行って、研究準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」と深く関連する「一般化された積対象性」という新しい研究主題に集中したために、有理型のBorcherds積を積対称性で特徴づける当初の目的はあまり進展していない。また、四元数ユニタリ群の場合のSaito-Kurokawa型リフトやBorcherds型リフトの研究は予備的研究が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
レベルをもったBorcherds積の研究は何人かの研究者が行ってきたが、あまり統一的なものではなかった。平成26年度に思い至った「一般化された積対象性」は全く新しいアイデアであり、レベルをもったBorcherds積を統一的に考察できる可能性を与えるものである。当初の研究目的である有理型のBorcherds積や四元数ユニタリ群の場合のSaito-Kurokawa型リフトやBorcherds型リフトの研究と並行して、新たな研究テーマとして研究を進める計画である。
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