Outline of Annual Research Achievements |
楕円量子群U_q,p(sl_N)のレベル1最高ウェイト既約表現の繋絡作用素の合成積のトレースとして面型楕円q-KZ方程式の形式的積分解を構成した. また, 被積分関数を位相関数部分と重み関数部分に分離する明確なルールを見出して, 重み関数の明示式を導出した. この重み関数は, 三角関数型において既知のものの楕円関数的かつダイナミカルな類似を与える. さらに, 繋絡作用素の交換関係に基づいて重み関数の変換式を導き, 変換行列として正しくダイナミカルな楕円Rが現れることを示した. また, この変換式に基づいて, 楕円ヘッケ環を関数空間上の作用素として定式化し, 重み関数は, このヘッケ環の作用に関して表現の基底をなすことを示した. 現在, 面型楕円q-KZ方程式の積分解への楕円アフィン ヘッケ環の作用を考察中である. 本研究は, KZ方程式の解とCalogero-Sutherland模型の固有関数であるJack多項式との対応を謳うCherednik-Matsuo対応を, q-差分かつ楕円関数的に拡張して, 面型楕円q-KZ方程式の解に基づいて楕円Ruijsenaars模型の固有関数の明示式を導出し, q-差分三角関数型の場合に現れるMacdonald多項式の楕円関数類似を定式化することが目的であった. 楕円量子群U_q,p(sl_N)の表現に基づいて, 面型楕円q-KZ方程式の形式的積分解や重み関数が導出でき, さらにはそれへのアフィン ヘッケ環の作用も議論できるようになったことは, 研究の遂行に向けての大きな成果である. また, 2015年度の成果として, 楕円量子群U_q,p(gl_N)のL-作用素の量子行列式や小行列式が定式化され, 中心元が理解できたことで, 今後, 楕円量子群の表現に基づく楕円Ruijisenaars模型の調和解析的な研究が進展すると期待出来る.
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