2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400050
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
加藤 文元 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (50294880)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リジッド幾何学 / 代数幾何学 / トロピカル幾何学 / Berkovich幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究は当初の研究計画に則って、トロピカル幾何学やBerkovich幾何学の専門家と交流することを通して、従来型の既存理論との関連について探り、「基礎づけ+従来型理論との関連」というフィードバック方式の研究形態を遂行することに努力した。その基本的な成果は以下の通り: ・トロピカル幾何学およびBerkovich幾何学に関する国際研究集会2つに参加。そのうちの1つにおいては口頭発表(招待公演)を行った。これによって多くの専門家との研究交流が実現した。 ・特に〈リジッド幾何学と退化〉というテーマに関連して、リジッド幾何学の代数幾何学一般への応用という観点を充実させるべく新しいアイデアとして、いわゆる「Henselian Rigid Geometry(ヘンゼル的リジッド幾何学)」の枠組みに至った。この新しい非アルキメデス的幾何学のアイデアは、すでに萌芽的・散発的には従来にもあったが、代数幾何学一般への応用という枠組みの中で本格的に考えられたことはなかった。今般の研究によって、この方向性が極めて多くの新しい諸知見をもたらすものであることが明らかとなった。27年度の研究において(部分的には斎藤秀司との共同研究によって)その基礎付けの仕事に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・代数幾何学一般との関連性、およびその応用可能性を探るという当初の研究課題を遂行する途上で、「ヘンゼル的リジッド幾何学」の着想に至り、その基礎付けの問題に着手することができた。のみならず、この枠組みの将来性について、いくつもの観点から検討することができ、そこからこの幾何学の代数幾何学一般への応用に関して豊かな可能性が見えてきた。27年度における「ヘンゼル的リジッド幾何学」の基礎付けにおいては、主に関連する可換環論やホモロジー代数的な基礎部分について考察し、期待通りの成果を得ている。これらの成果は、今後期待される、より幾何学色の濃い基礎的知見と合わせて、近日中に論文の形で発表するつもりである。 ・リジッド幾何学(主に従来型のもの)本体の基礎付けの問題については、従来より出版を計画している著書(藤原一宏との共著)の校正作業を進めている。何分、極めて大著である上に、数学的に微妙かつ技術的にこうどな内容であるために、校正作業は何重にも行う必要があり、大幅に遅れているが、平成28年度中には完全に校正作業は終わる見込みである(すでにヨーロッパ数学会のモノグラフシリーズからの刊行が(先方の直々の依頼により)決まっており、二重の査読も終了している)。
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Strategy for Future Research Activity |
・校正作業を行っている著書『Foundations of rigid geometry I』(藤原一宏との共著)については、その校正作業を終わらせ、European Mathematical Society Monograph Seriesから刊行する。 ・「Henselian rigid geometry」については、より幾何学色の強い基礎付けについて集中的な研究を行う。今後、考察を行うべき問題については次のようなものを考えている:(1) コホモロジーの有限性、(2) GAGA比較定理、(3) GAGA存在定理。このうち、(1)と(2)は違いに連携した問題であり、同時に考察することが必要となると思われる。具体的には、射影多様体のコホモロジーの計算を与えるチェック計算と、ヘンゼル的リジッド空間のコホモロジーの計算を与えるチェック計算とを連立して比較することになるが、最も重要な点は、後者のチェック計算における導分の像が閉集合であることを示すことあり、ここが技術的に最も困難な場所である。ここでは有限性が仮定できないが、示されれば有限性も同時に従う。この技術的な点について、現在では従来のリジッド幾何学における有限性定理の証明に用いられたKiehlのテクニックを若干修正して応用することを考えている。いずれにしても、これらの重要な幾何学的問題を完全に解決することが平成28年度の研究課題の中心となり、これによってこの研究の当初の目的であった「代数幾何学への応用的展開を通して、リジッド幾何学から派生する新しい幾何学の視点の可能性についてより深い理解に到達する」という目的をできるだけ達成させることを目指す。
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Causes of Carryover |
27年度の研究遂行において、特に必要と思われる海外の専門家との交流を積極的に推進しており、その一環として3月5日~3月13日の日程でトルコのIMBM(イスタンブール数理科学センター)を訪問し、当地の研究者たちと交流することを計画していた。しかしながら、昨今のイスタンブールにおける社会情勢不安、特にイスラム国過激派テロによる治安・安全状況の悪化に伴い、直前に渡航を断念し、航空券や宿泊などに関する一切の支出をキャンセルした。その際の渡航費用として考えていた金額のうち、一部は今般キャンセルした渡航で議論が期待されていた分野の専門書などの購入に充て、渡航ができなかった分の研究遂行のための知見獲得の補助としたが、多くは残として残る結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の経費と合わせて、先般研究打ち合わせを行えなかった分野についての知見獲得のための旅費に充てる計画である。具体的には先般の渡航先の研究者たちの何人かとゆかりの深い研究機関の一つである、イタリア・パドヴァ大学の数学教室を訪問し、Gunther Cornelissen教授との議論を通して、研究課題遂行に必要である分野の新しい知見や研究の進展状況などについて研究打ち合わせを行う予定であるが、そのための渡航旅費および宿泊費の一部として遣うことを予定している。
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Research Products
(4 results)