2017 Fiscal Year Research-status Report
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26400060
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩谷 隆 東北大学, 理学研究科, 教授 (90235507)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 等周不等式 / オブザーバブル分散 / グラフ多様体 / エンド / 楕円 / ガウス空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究として,測度距離空間において,そのisoperimetric profileがある関数以上ならば,オブザーバブル分散がその関数から決まる定数以下となることを示し,等号成立条件を考察した(中島氏と共同).等号成立は空間が以下の3条件(1),(2),(3)のいずれかを満たすことを証明した.(1) 空間がある2点を結ぶ最短測地線で覆われる.(2) 空間がある1点から出発する半直線で覆われる.(3) 空間が直線で覆われて,それらの任意の2直線は分岐点でのみ交わる.とくに空間がリーマン多様体のとき,空間は球面に同相(より強く,twisted sphereに微分同相)またはある可微分多様体と実数直線の積に微分同相となる.上記に述べたisoperimetric profileの比較条件はリッチ曲率の比較条件より緩く,この結果はChengの最大直径定理およびCheeger-Gromollの分割定理の一種の一般化と位置付けられる. もう一つの研究として,完備非コンパクトなリーマン多様体で体積有限かつ断面曲率が負で-1以上となるものの例を構成した(藤原氏と共同).このような多様体のエンドにどのような位相形が現れるかは一つの大きな問題となっている.今回,任意の3次元フリップ・グラフ多様体がそのような多様体のエンドに現れることを具体的な計量の構成をすることで示した.さらにある種の高次元化について考察中である. 別の研究として,楕円の極限について調べた(数川氏と共同).今までの研究において,球面,射影空間,旗多様体の次元が無限大へ発散するときのGromovの弱位相に関する極限空間を決定したが,楕円については未解決であった.新しいアイディアの元,楕円の極限が無限次元ガウス空間であることが示せるという見通しがついた.これは現在進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
isoperimetric profileの研究においては,論文(33ページ)を執筆し投稿した.これは1年間の研究として十分な成果であると評価できる.さらに2つの課題について研究を初めて現在続行中であるが,論文として発表できると高い確率で見込まれる.また,過去に投稿した旗多様体の極限空間についての論文(高津氏と共同)が雑誌に掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
isoperimetric profileの研究において,isoperimetric profileの比較条件が空間の収束において安定であることが分かったので,それを論文改定の折に付け加える予定である. 負曲率多様体のエンドの計量の構成の研究においては,高次元化に対するアイディアを得ている.これを実現すべく計量の構成と断面曲率の計算を行うが,次元が高いと計算量が多くなり試行錯誤が極めて大変である.ここで,数式処理ソフトを導入しその解決を測る. 楕円体の極限空間の研究においては,証明の道筋はついたので,それを厳密に書き下す.また極限がガウス測度をもつヒルベルト空間となる場合に,ボックス距離についての収束条件についても考察する.このためにヒルベルト空間上のガウス測度の理論の詳細を習得する必要がある.
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Research Products
(7 results)