2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400062
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
正宗 淳 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50706538)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マルコフ過程 / 保存則 / シュレディンガー作用素 / 単体的複体 / リュービル性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究実績は以下の3つである。 (1)ディリクレ形式の長時間挙動の重要な問題は保存則の決定である。ディリクレ形式はポテンシャル項を持つと保存則が成立しないため,従来の保存則の研究はポテンシャルがない場合に限定されてきた。最近,Lenz-Kellerにより,離散シュレディンガー作用素に対して,一般化された保存則「stochastic complete at infinity」の概念が提唱された。この研究は非常に重要であるが,最も重要な例である,リーマン多様体のシュレディンガー作用素の場合については何も知られていない。申請者はM. Schmidt と協力して,リーマン多様体のシュレディンガー作用素に対して「stochastic complete at infinity」を定式化し,さらに,それをリュービル性や熱方程式の解の一意性により特徴づけた。また,シュレディンガー作用素の解の正則性,最大値原理,熱核の構成など,リーマン多様体のシュレディンガー作用素の解析と幾何学の基礎理論の構築も行った。 (2)グラフの高次元版の単体的複体の解析と幾何学は重要であるが,その研究は十分に発達しているとは言えない。申請者はM. Kellerと協力して,単体的複体のラプラシアンを定義し,さらに,そのラプラシアンがグラフのシュレディンガー作用素となるような単体的複体のadjacency relationshipsを決定した。 (3)リュービル性は大域解析の中心的話題である。これまでに,Lpリュービル性は,1<p,及び,p=無限大の場合に深い研究がなされてきたが,p=1の場合は困難であり,その幾何学的意味は未だに不明である。申請者は村田實と協力して,対称なエンドを持つ多様体に対して,L1リュービル性が成立,及び,成立しない条件を得た。さらに,その結果の一部を,エンドが非対称な場合に拡張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的の一つは,マルコフ過程の長時間挙動に関する問題の解決である。とりわけ重要な問題である保存則の研究を発展させることが中心的課題である。本研究において,従来の保存則を一般化した「無限遠における保存性」という概念をリーマン多様体のシュレディンガー作用素に対して提唱し,さらに,それの特徴付けを様々な方法で行った。さらに,この問題と密接に関係をする重要な研究課題である,単体的複体の解析の基礎理論の構築,さらに,エンドを持つリーマン多様体のL1リュービル性に対する結果を得た。これらは当初の研究計画を超えた研究発展であるゆえ,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の研究実績のそれぞれの今後の推進方策を述べる。 (1)リーマン多様体のシュレディンガー作用素に対して「stochastic complete at infinity」に対応する「最大値原理」を発見し,それを用いた極小局面の新たな研究の展開を目指す。 (2)無限単体的複体のラプラシアンが本質的自己共役性となる条件を発見する。より具体的には,グラフのシュレディンガー作用素の本質的自己共役性を決定し,さらに,それを用いて無限単体的複体のラプラシアンの本質的自己共役性の研究へ応用する。 (3)対称なエンドを持つ多様体に対して,L1リュービル性が成立,及び,成立しない条件をエンドのタイプにより完全に決定し,さらに,その結果をエンドが非対称な場合に拡張することを目指す。
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Causes of Carryover |
招聘を予定していた研究者が相手の都合により招聘が来年に延期された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の間に研究集会を開催して,前年度に招聘を予定していた研究者を招聘して研究計画の内容に沿って研究を遂行する。
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Research Products
(6 results)