2016 Fiscal Year Research-status Report
幾何学的変分問題と離散幾何学の数値解析を援用した研究
Project/Area Number |
26400067
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内藤 久資 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (40211411)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 離散幾何学 / 曲面論 |
Outline of Annual Research Achievements |
三分岐離散曲面に関する幾何学の研究を行った. 特に,3次元ユークリッド空間内の三分岐離散曲面に対して,その頂点ごとの曲率を定義した.この研究は、炭素構造がなすネットワークを幾何学的に考察することを目的として、その幾何学的実現としての三分岐離散曲面を定義し、その物性を幾何学的な言葉で書き表すことを目標とした研究の第一歩である。その中では、カーボン・ナノチューブ、フラーレン、マッカイ結晶などを例としてあげ、材料科学及び有機化学で「負曲率炭素構造」と呼ばれているマッカイ結晶が、実際に負曲率を持つことを示した。また、フラーレン(C60)は正の低曲率曲面であることも示されている。 さらに,三分岐離散曲面に対して,複数の種類の細分を定義した.標準実現された三分岐離散曲面の細分列が,どのような条件の下に連続曲面にハウスドルフ収束するかを考察し,極小エネルギーによる細分列の場合には,標準実現三分岐離散曲面が連続曲面にハウスドルフ収束することを証明した.さらに,その細分列が,よりなめらかな収束をするかの研究を進めている.三分岐離散曲面の細分は、幾何学的には、連続曲面への収束を示すことが目的となるが、一方では、材料科学で関心を集めている、立体グラフェンの幾何学的な構造を記述することに利用できると考えている。 一方,極小曲面が作るネットワークを考察し,3次元ユークリッド空間内のネットワークと共連続構造との関連に関しての研究を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,三分岐離散曲面のなめらかな収束に関しては,格子欠陥が生じると考えていた.それを回避する手段に「特異点の周りの epsilon regularity」を用いる必要があると考えていたが,極小エネルギーによる細分を考えることにより,特別な場合であるが,細分列のハウスドルフ収束を示すことができたため,よりなめらかな収束に関しても十分な期待ができることがわかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
3次元ユークリッド空間内の三分岐離散曲面の一般論を構築することを目的としている.その中で,多くの数値計算例を通じて,細分列の収束の例などを計算し,可視化を通じて収束の一般論を構築する. 基本的には,多くの例の計算を通じて,種々の現象を観察したうえで,一般論を予想し証明するという基本的な研究推進方策に違いはない. 一方,三分岐離散曲面は,分子構造の幾何学に動機づけを持つため,材料科学者,有機化学者などとの議論を通じて,離散曲面論の応用も考察することを,より強力に推進する.
|
Causes of Carryover |
前年度に個人的な理由により,研究に多くの時間を割くことができず,次年度仕様額が生じた. それを今年度にも利用したが,すべてを利用することはできなかった. しかし,今年度は十分に研究を進めることができたので,問題はないと考えている.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
年次計画に沿って研究を進め、それに対応して使用する.
|