2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩井 敏洋 京都大学, 情報学研究科, 名誉教授 (10021635)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チャーン数 / ディラック方程式 / スペクトル流 / 国際研究者交流 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
「半量子力学系の対称性とトポロジー」という標題のもとに、球面上で定義されたハミルトニアンのパラメータ変化に伴う随伴バンドルのチャーン数の変化について、デルタ・チャーンの名で研究を続けてきた。ここに言う半量子系とは古典的な力学変数を取り込んだ(球面上の)量子的な(エルミート行列で表示される)力学系という意味であり、デルタ・チャーンとは縮退のない固有値に随伴する複素直線バンドルのチャーン数の変化を表す量である。今回の研究の目的は、半量子系のデルタ・チャーンに対応する全量子系での概念を見出すことである。デルタ・チャーンは2次元平面(球面の接平面)上の2行2列のエルミート行列を介して定義された。これに対応する全量子系の概念は2次元ディラック方程式である。これを平面内の円板上で、ある境界条件(APS境界条件と呼ぶ)のもとで解くことにより、デルタ・チャーンの対応物を見出した。すなわち、スペクトル流である。その定義は、パラメータの変化に伴って、ゼロを通過した固有値の数を正負を込めて数えたものである。こうして、±1のデルタ・チャーンには、±1のスペクトル流が対応することが、APS境界条件のもとで成り立つことが証明された。ここに、APSはAtiyah-Patodi-Singerの略号である。 多様体上の最適化の研究は以前から続けてきたが、グラスマン多様体上の最適化問題を固有値問題の解法に応用するという内容の論文が昨年度に漸く公刊された。特に、固有値の縮退がある場合には最適解の集合が部分多様体を成すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究当初は、報告者のいう半量子系でのデルタ・チャーンに対応する全量子系での概念が何に当たるか検討がついていなかったのであるが、報告者のフランス出張中の共同研究者との討論の中から、それがスペクトル流であることが分かり、さらにディラック方程式の境界値問題に対する理解も十分に進んだので、研究課題の全体像が一層明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度の項目の中でも述べたように、ディラック方程式の境界値問題に対する理解が進んだので、2次元のディラック方程式から3次元のディラック方程式に理論を拡張することや、その他の境界条件の下での固有値問題の解法に取り組む。境界条件の取り方に依らずに、パラメーの変化に伴うディラック方程式の固有値の変化の様子が見出されれば、それを記述する数学的な指数定理の形が予想できるだろう。
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Causes of Carryover |
昨年度フランスに出張した際に、現地での宿泊費を先方の大学で負担してもらったので、それに見合う額が余ることとなった。(実際に戻入手続きを取った。)
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は繰越金を活用して、昨年度よりも長期の外国出張をする予定である。2箇所(オランダ、ポーランド)の研究会で研究発表とフランスでの共同研究をする予定である。
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