2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400088
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
山下 靖 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (70239987)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低次元位相幾何学 / 双曲幾何学 / 指標多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
曲面Σの基本群πからリー群Gへの表現全体の空間Hom(π,G)には群Gが共役により作用する。この作用による幾何学的不変式論の意味での商空間Xを指標多様体という。この指標多様体を、表現の像が離散群になる部分とそうでない部分に分割すると、前者はΣのG構造の変形の空間とみなすことができる。特にGがSL(2,C)の場合は双曲幾何構造の変形空間であり。重要な研究対象である。また、指標多様体には曲面Σの写像類群が自然に作用し、この作用の複雑さによっても指標多様体は2つに分割される。これら2つの関係は未解明な部分が多い。 平成26年度においては、離散群が双曲群になるための条件について研究を行った。特に群がオートマティック構造を許容し、かつ双曲群でない場合に、その群が階数2の自由アーベル群を部分群として持つかどうかについて研究を行った。その結果、階数2の自由アーベル群に近い構造が群のケーリーグラフの部分グラフとして現れることを示した。さらにもとの群がねじれを持たず、CAT(0)立方体複体に自由かつココンパクトな作用を持ち、さらにその商空間がよい性質を持つ場合には、実際に階数2の自由アーベル群を部分群として含むことを示すことに成功した。これは3次元多様体論における幾何化(双曲化)のオートマティック群版が成立していることを示しており、その意味で3次元多様体論との関係からも重要な意義があると考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画においては、平成26年度は計算機実験を中心にデータの比較を行い、それをもとに指標多様体の離散性と力学系としての性質について考察を進める予定であった。これについては実際に計算機実験を行うことができ、両者の関係についての解明が進んだ。さらに研究実績の概要欄で述べたように、オートマティック群の双曲性について研究が進展したため、上記の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
オートマティック群の双曲性については、階数2の自由アーベル群の存在を示すことができたのは、群にねじれがない場合である。研究実績欄で述べたように、さらにCAT(0)空間へのよい作用などいくつかの条件が必要であった。ここで、CAT(0)などに関する条件はそのままにして、ねじれを許容するような場合について、今後研究を推進していく予定である。さらに、関連して群の増大度関数に関する研究を推進する。また、指標多様体において離散性と力学的安定性が同値でないような部分集合についての研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題を遂行する上で、シンガポール国立大学のSer Peow Tan氏と研究連絡を行う予定で、そのための旅費を予定していたが、同氏が平成26年度に2度来日することになり、国内で研究連絡を行うことになったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に上記の方と研究連絡を行う予定で、そのための旅費として使用する計画である。
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