2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400095
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
松本 幸夫 学習院大学, 理学部, 教授 (20011637)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リーマン面 / 写像類群 / モジュライ空間 / コンパクト化 / 結晶群 |
Outline of Annual Research Achievements |
リーマン面のモジュライ空間の自然なコンパクト化であるDMコンパクト化のオービフォールド構造についての研究を行った。当該年度の主な成果は、N.V. Ivanovによる「切り詰めタイヒミュラー空間」を用いて、モジュライ空間の自然なオービフォールド構造を記述したことである。「切り詰めタイヒミュラー空間」とは、十分小さな正の実数e>0 を与えたとき、ポアンカレ計量で測った単純閉測地線の長さの最小値がe以上であるようなリーマン面達のなすタイヒミュラー空間の部分多様体のことである(角をもつ実解析的多様体である。)これは無限個の面を持つ「多面体」のような構造を持っている。これに写像類群が等長的に働く。各面は有限個の単純閉測地線の非交和に対応している。これらの単純閉測地線に沿うデーン・ツイストで生成される群Gの正規化群をNGとすると、NG/Gが、対応する無限遠因子の周りのオービフォールド構造を与える群になっていることが証明できた。すなわち、切り詰めタイヒミュラー空間の各面がモジュライ空間のDMコンパクト化のオービフォールド構造を決定するものになっている。さらに、次元が最小の面(実次元が3g-3)についてNG/Gを考えると、eを0に飛ばす極限においていわゆる「結晶群」が現れることを発見した。これはタイヒミュラー空間と結晶群という、従来まったく別と思われていた分野に意外な関連のあることを意味している。これについては現在、論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究当初にモジュライ空間のコンパクト化のオービフォールド構造と、研究成果の欄で述べた群NG/Gとの関連は分かっていたが、それがIvanovの「切り詰めタイヒミュラー空間」とどのように関連するかについては分かっていなかった。その関連を明らかにすることができたのは予想外の成果であった。また、タイヒミュラー空間と結晶群の関連が、「切り詰めタイヒミュラー空間」を考えることにより、明らかになったのも大きな収穫であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
モジュライ空間のDMコンパクト化のオービフォールド構造に関する研究を完成させ、論文を執筆することが当面の目標である。その後の大きな目標は、タイヒミュラー空間と結晶群が関連することがわかったので、リー群とワイル群のアナロジーを考えることである。特に昔から、閉曲面の「カーブ複体」とある種の群に付随する「ティッツ・ビルディング」との類似が指摘されているが、結晶群とワイル群の類似を梃子にして、より具体的な関連を探ることが課題になると思われる。たとえば、モジュライ空間のDMコンパクト化と対称空間の佐武コンパクト化の関連について研究することが可能になると思う。
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Causes of Carryover |
各出張時に、旅費宿泊費をかなり節約したこと、また、札幌のシンポジュームは主催者の好意により、出張旅費を支出してもらったこと。また、研究集会で講演を依頼した他大学の研究者が「気を効かして」非常に安い宿泊所を選んだなどの理由が重なり、最終的に、予定していた旅費宿泊費が5万円ほど節約できたことが主な理由である。これは次年度に有効に活用するつもりである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は海外出張を2件ほど計画している。また海外の研究者の招聘も計画しているので前年度に生じた繰越金は有効に活用できるものと考えている。
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