2014 Fiscal Year Research-status Report
非可換確率空間におけるフィッシャー情報量とエントロピーの変形に関する研究
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26400112
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
吉田 裕亮 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10220667)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 関数解析学 / 作用素環論 / 非可換確率論 / エントロピー / 量子変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、研究実施計画通り、非可換独立性と Fisher 情報量ならびにエントロピーの関係についての基礎的調査を行った。その主要な研究成果のひとつとして、以下のことが挙げられる。すなわち古典的 de Brujin 関係式の相対エントロピー版の調査研究において、参照 (reference) 測度と対象 (object) 測度の両方を Gauss 型確率変数の独立増分による時間発展、つまり単純な熱拡散ではなく、より一般のFokker-Planck 方程式による拡散過程に変えることにより、新たな関係式が得られることが示された。これにより、相対エントロピーの相対 Fisher 情報量による新たな時間積分表示が与られ、今まで知られていたエントロピー・ギャップを特殊な場合として含む、積分表示が導かれることが示された。本結果に関しては学術論文への取り纏めを行っている。 非可換解析に関する基礎的研究のとしては、要素間に相関のあるランダム行列のスペクトル極限分布に関して調査研究を行った。特に、要素が行方向と列方向に 2次元 MA モデルで与えられる時系列的な相関のある場合に、極限分布が複合自由 Poisson 分布で与えられることを明らかにした。ランダム行列は非可換解析の重要なモデルであり、今後の本研究課題の非可換エントロピーならびに非可換 Fisher 情報量の研究に資する点は多い。本結果に関しては、研究成果を取り纏め行い、現在、学術雑誌への投稿の段階にある。 さらに、平成26年度の夏には、ポーランド科学アカデミーのカンファレンスセンターで開催された非可換解析学に関する国際シンポジウムに参加・出席し、座長担当ならびに本研究課題に関しての研究討議を行なった。同会出席のために必要な旅費に本助成金を活用したことも併せて報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
古典系において、今まで deBruijn 関係式の拡張と知られていた参照測度を平衡 (Gibbs) 測度とし、対象測度を Fokker-Planck 方程式による拡散過程により時間発展させる手法を、更に拡張して、参照測度側も、同じポテンシャル関数による Fokker-Planck 方程式で初期測度からの時間発展を取ることにより、新たな相対エントロピーの積分表示ならびにエントロピー・ギャップ公式を導くことを行った。これにより、非可換版に関する本研究課題の、更なる発展が期待されるものである。 また、ランダム行列の調査研究に関しては当初予定では既存研究の調査を主たる目標としていたが、行方向ならびに列方向の双方に相関のある成分の場合に、そのスペクトル極限分布が複合自由 Poisson 分布として与えられることを示すことができた点は、関連する新たな知見が得られたものと考えられる。 加えて、平成26年度開催の関連分野の国際シンポジウム16th Workshop NON- COMMUTATIVE HARMONIC ANALYSIS" の Scientific committee への就任の依頼を受けたことも本研究課題の認知度の高まりの結果と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究実施計画に関しては、当初予定通りであり、特に、研究計画の変更をすべき事項あるいは研究遂行を遂行する上での大きな課題は現時点では発生してはいない。したがって、実施計画通り、本年度は、一般の非可換独立性に基づくエントロピーならびに Fisher 情報量の変形に向けて、自由独立性の場合について精査する。 前年度に取り纏めを行った、古典系の場合の reference 測度と object 測度が共に Fokker-Planck 方程式により時間発展させる手法を自由確率論の枠組みで実行する予定である。幸いも、自由確率空間での自由拡散過程および、それに付随したFokker-Planck 方程式の理論はランダム行列の観点より研究されている。これらの結果を用いることにより当該研究を深化発展させる予定である。 また、当該研究課題に関する成果に関しては、国際的な研究集会での発表を行うことにより国外の関連研究者との研究討議を行なうと共に、必要に応じて国内の関連研究者との最新の研究情報の交換ならびに討議のための研究打ち合わせを行なうことに努める。さらに、本年度の夏には、本研究課題に密接に関連する研究を行っている Popescu 教授の来日が予定されている。同氏の来日の際して、可能であれば高度な専門的知識の供与を依頼するよう現在調整中であり、実現できれば、本研究課題の今後の発展に大きく寄与するものと期待される。
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Causes of Carryover |
平成26年度2月頃を予定していた非可換解析学ならびに関数解析関連図書の購入を新刊書の発刊とのことで、発刊を待っての導入を行うことにしたため、次年度(平成27年度)に使用額を繰り入れることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の当初使用計画通りの助成金の使用に加えて、平成27年の4月と5月に非可換解析学関連ならびに関数解析学関連の新刊された図書を購入し、本研究課題についての最新の研究資料として充実を図ることにする。
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Research Products
(3 results)