2018 Fiscal Year Research-status Report
非可換確率空間におけるフィッシャー情報量とエントロピーの変形に関する研究
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26400112
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
吉田 裕亮 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10220667)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非可換確率論 / 作用素環論 / 関数解析学 / エントロピー / 量子変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、自由独立性と通常の独立性の補間に関する調査として、q-変形 Meixner 分布に関する調査を行った。特に、 q-Meixner 分布族を分布として持つ非可換確率変数をB型 Fock 空間でも構成可能であることを、愛知教育大の淺井氏との共同で示した。これは既にA型 Fock空間 (今まで知られている q-変形 Fock 空間)上での構成の拡張に当たるものである。 また、平成29年度の後半に見出したランダム行列モデルの一つであるF行列のスペクトル極限分布が Meixner 分布族の一つである negative binomial class の自由類似に相当することについて、当該結果を一般化し free beta prime 分布(自由第2種β分布)を導入した。本成果は学術論文誌に投稿を行った。 加えてこのH30年度後半には、この自由第2種β分布から自由第1種β分布が構成可能であることが分かり、更にこれらの自由変形類似を精査したところ、Fisher 情報量を与えるスコア関数の対応が本質的な役割を果たしていることを発見した。この事実は本研究課題の非可換確率空間での Fisher 情報量の変形に非常に重要な事実であり、このスコア関数の対応をより精密に調査することにより、本研究課題の当初の研究目的がより高度に達成されるものを判断し、2019年度に研究期間を延長して実施することとした。 また平成30年度においてはは非可換確率論とランダム行列に関して高度な知見を有する CIMAT の Carlos Vargas 氏を招へいし集中的な研究討議を行った。同氏の招へいは本科研費により実施されたことも併せて報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由としては以下が挙げられる。エントロピーならびに Fisher 情報量の変形に向けての Mexiner 分布族の特徴付けに関する調査の段階でF行列が自由 Meixner 分布族の重要なクラスの一つになることの発見。これに基づき自由第2種β分布を導入し、この分布から自由第1種β分布を構成する際に、Fisher 情報量を与える基本量であるスコア関数の振る舞いを同定できたこと。これらは当初の研究計画にあるように非可換確率空間における Fisher 情報量とエントロピーの変形に関する基本量の特定と、その挙動解析が達成されたものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究実施計画に関しては、本研究課題から派生して得られたランダム行列関連する新たな知見に関し、その拡張を検討する。具体的にはランダム行列理論を統計的データ解析に応用を目指す。 また本研究において、これまで主として自由独立性と通常の独立性の補間を与える変形に基づくエントロピーならびに Fisher 情報量の変型を扱って来たが、今までに本研究で得られた知見、特に平成 30 年度の実績概要で述べたスコア関数の対応が、対極の変形に当たる自由独立性とブール独立性の補間を与える変形に対するエントロピーならびに Fisher 情報量の変形に適用可能か否かの調査研究も行う。これにより非可換確率空間における変形 Fisher 情報量ならびに変形エントロピーの総合的研究へと纏め上げて行きたい。 また、2019年度においても、従前通り本研究課題に密接に関連する国内外で開催される研究集会等に出席しての研究動向の把握ならびに積極的な成果発表を実施するために、本科研費からの支出を予定している。また、2019年度には、本科研費に支援された非可換確率論ならびにランダム行列に関する研究成果報告のために関連研究者を交えたワークショップの開催を予定している。
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Causes of Carryover |
平成30年度において当初予定していた、外国出張に掛る旅費に関しては、先方負担の形で手当てが可能となり、その予定分が本研究の遂行に必要な他の旅費に有効に活用できることが平成30年12月に分かり、ほぼ同時期に本研究の更なる高度な研究目的達成のために調査すべき事項が判明した。そこでその拡張すべき研究事項に充てるため研究期間の延長の検討を行った。 2019年度の夏には京都において、本研究課題に密接に関連する国際会議が予定されている。当該の国際会議に参加に必要な経費に充てると、共に本研究目的の達成の高度化に向けて2019年度前半に変形 Fisher 情報量の関連研究情報ならびに資料の収集に注力する予定である。
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Research Products
(4 results)